「ふぅーー」
行灯がひとつだけ灯る薄暗いその部屋に細い紫煙が一筋舞う
真っ赤な唇
長い髪
事を終えたばかりのその部屋で女が一人くつろいでいた
しかも女の姿は妙に色っぽかった
身に着けているものといえば薄桃色の襦袢が一枚
いつものように肩まで肌蹴けさせ白く柔らかな豊乳を覗かせていた
腰を落ち着けるその下には皺のできた布団
さらにその周りには脱ぎ捨てられた着物が無数散乱していた
「ん……」
「あら、起きたの?」
隣で身じろぐ気配に煙管を咥えて余韻に浸っていた女はそちらの方へと顔を向けた
女の視線の先、むくりと起き上がる広い背中
筋肉質な腕
厚い胸板
広い肩幅
しかしそこから上は何も無かった
肩から上のない体
細くけれど筋肉質なその体は明らかに男性のもの
「ああ」
その体は、どこから出ているのか頷くような声を上げるとその場に胡坐をかいて座った
「もう少し寝てても良かったのに、夜が明けるにはまだ早いわよ」
対する女も、その異様な光景に驚くことも無く微笑むと目の前に座った体に向かって休むよう進めてきた
「そうだな、だが……」
女の優しい言葉に頭の無い体は頷くような素振りを見せた後
「これじゃあ寝辛くてかなわん」
と拗ねたような声を上げてきた
「あら、そお?」
女はそう言うと、目の前の体には目もくれず視線を下へと移した
そこには――
ぶすっと眉間に皺を寄せ仏頂面をした男の顔があった
首から上だけの頭
茶色の短髪に整った顔立ち
十分美形の部類に入る美丈夫の頭は何故か女の腕の中にあった
しかも豊満な胸に押し当てられるようにして抱きかかえられているではないか
その羨ましいシチュエーションにも関わらずその生首は不機嫌な様子だった
「その……く、苦しくて寝ていられん」
男はうっすらと頬を染めながら不承不承といった態でそう言ってきた
「ふ〜ん」
女は目を細めながらそう言うと、ひょいっとその生首を片手に持ち替え自分の目線の高さに持ってくるとじっと男の顔を見つめた
まじまじと見つめてくる女
「な、なんだ?」
生首男は嫌な予感につつ、と冷や汗を垂らしながら女を見た
その途端
にっこり
女は蕩けるような極上の笑顔を向けてきた
その笑顔に男の――今は離れている――背筋がぞくりと粟立つ
そして――
「なによ〜そんなにしたいなら素直に言えばいいじゃな〜い♪」
女の嬉しそうな声と共に、がばり、とその生首はまた布団へと押し倒されたのであった
「ま、待て紀乃!」
「うふふ照れちゃってもう♪今夜は寝かさないわよ〜〜♪♪」
「待て待て、わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
チャンチャン...
(自主規制)
了
[戻る] [アンケトップ] [次へ]