注意:裏表現があります。途中ご案内がありますが18歳未満の方は閲覧禁止ですのでご注意下さい。
尚、閲覧した後の苦情等はお受け致しかねます。お約束を守って頂ける方のみ下へお進み下さい。





夜半時
ひたひたと夜の廊下を一人歩くつららの姿があった
長い黒髪と雪の様な白い肌をしっとりと濡らし
湯浴みを終えたばかりの襦袢姿で自室へと向かっていた

あの角を曲がれば自分の部屋

つららはそう思いながら、ふと視線を先へと向けた
その時――

「つらら」

つららの元に耳慣れた主の声が聞こえて来た
背後から聞こえて来たその声につららは反射的に振り返る
案の定そこにはリクオの姿があった
「こんな夜分にどうされましたか?」
夜の姿へと変じた彼につららはいつものように言葉をかけた
しかしリクオはそんなつららを黙ったまま見下ろしていた
「なにか……」
ありましたか?と、一向に用件を言いつけてこない主につららが首を傾げていると
また背後から声が聞こえて来た
その声に「え?」と動きを止める
まさか?
つららは胸中で呟きながらゆっくりと振り返った
途端、驚愕に見開かれる瞳
黄金の瞳をこれでもかと言うほど瞠りながらつららはポカンと口を開けてその場に固まってしまった
つららの振り返った視線の先には――

リクオの姿

にこにこと春の陽だまりの様な笑顔を向けた昼のリクオの姿があった

「え?え?」
つららは軽いパニックになりながら前後に居る『リクオ』を交互に見た
「な、な、な……」

なんですかこれは〜〜〜〜〜〜!!??

次の瞬間つららの口から絶叫が木霊した
わなわなと肩を震わせ
ぷるぷると震える指先で二人のリクオを指差す

「ああ、これか?なんか修行してたらこうなった」

夢だ幻だと己の頬を摘んで後退るつららに、二人のリクオはずいっと近づくと笑顔で言ってきた
「しゅ、修行してたらって……」
その衝撃的な発言につららは瞳の螺旋を更にぐるぐると回しながらリクオ達を見る
どこからどう見ても昼のリクオと夜のリクオにつららの頭は恐慌状態だ
いよいよ以って卒倒しかけていたつららだったが、そこではたと気づいた

近い
近すぎる

何がとはいわずもがな
二人のリクオの距離であった
心なしかリクオ達の顔が近くにあるような
しかも挟み撃ちにされているのではないかと首を傾げた
「あ、あの……リクオ様?」
「「なんだ(い)?」」
つららの問いかけに二人のリクオは爽やかな笑顔で返してきた
その間にも段々と近づいてくる大小の体
これは気のせいなんかじゃない!とつららが気づいた時には遅かった
がしり
と徐に掴まれる腕
「きゃっ」
にやりと歪む形の良い唇
「つらら」
耳に心地の良い低い声
「僕達二人になれたんだ」
無邪気にコロコロと鳴る笑い声

「「せっかくだから」」

二人のリクオの声が同時に聞こえた
そう思った瞬間
「きゃあっ!?」
つららの体がふいに宙に浮いた

抱き上げられた
夜のリクオがつららを抱き上げたのだ
軽々と体を支える主につららの体は強張る
これは危険だと本能が伝えてくる
「な、なにを?」
震える声で見上げれば、楽しそうに目を細める主の顔が見えた
「皆で楽しもうよ」
横からは楽しそうににこにこと微笑む昼の主
「え?え?え?」
混乱し状況を飲み込めないつららを他所に
二人の主はさも楽しそうに長い廊下を歩き始めるのであった

[18歳以上の方は裏へ、それ以外の方は下へお進みください。]





いやあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!

チュン チュン チュン
はぁ、はぁ、と真っ青な顔で飛び起きるとそこは自分の部屋だった
ぴったりと閉められた襖の向こうからは朝の訪れを知らせる小鳥達の囀りが聞こえてきていた
真っ暗なその部屋でつららの荒い呼吸の音だけが響く
「ゆ、夢?」
つららは肌蹴ていた襦袢の合わせを抑えながらほぉ、と安堵の溜息を吐いた

なんて夢……

夢だったと判った瞬間、どっと疲れが押し寄せてきた
夢の中で何度ももがいたのであろう
着ていた襦袢は肌蹴け、帯は緩み髪の毛はボサボサ
とんでもなく、あられもない姿をしていた
ドキドキと鳴る心臓を押えながら我ながら酷い夢だったと溜息を吐く

まさか、まさか二人のリクオ様にあんな事を……

そこまで思い出してボッと顔が真っ赤になった
ぷしゅ〜と音を上げて湯気まで昇っている
興奮の冷めない火照った体をぱたぱたと己の手で仰ぎながらつららはのろのろと布団から這い出してきた

り、リクオ様にどんな顔して会えばいいの〜〜?

更に赤くなった頬をぶんぶんと振りながらつららは胸中で絶叫する
酷い脱力感に重い体を引き摺りながらなんとかタンスの前に着いた時

「つらら居る?」

この時間には珍しい主の声が聞こえて来た
「は、ははははい!!」
先ほどの夢の事もあってか、つららは聞こえて来た声に極端に反応する
飛び上がりながら返事をしてしまった自分に羞恥で真っ赤になりながらつららは恐る恐る部屋の襖を開けた
そろりと開けた襖の隙間から春の日差しのようなリクオの笑顔が飛び込んで来た
つららはその眩しい笑顔に内心「うっ」と呻きながら後ろめたい気持ちを隠して主へ挨拶をする
「お、おはようございますリクオ様」
「おはよう、入ってもいい?」
にこにこと屈託無く笑う主につららは一瞬どきりとした
先ほどの夢が脳裏に蘇ってくる
「す、すすすすみません、今起きたばかりですからその……」
顔を真っ赤にさせてごにょごにょと言い淀むつららにリクオは
「ああ、なら丁度いい」
と更に笑顔を深くして頷いてきた
「へ?」
驚いたのはもちろんで
つららは主の言葉に間抜けな声を上げて見上げた
そしてつららは驚愕する

にこにこと笑う主の後ろには

にやにやと不適な笑みを張り付かせた夜のリクオの姿が……

「あ、あの……」
口をパクパクしながら昼の姿のリクオの背後を指差すつららに
昼リクオは「ああ」と暢気に背後を振り返り
そして――



「修行していたらこうなったんだ」



嬉しそうにニコニコとつららの顔を見ながら言ってきたのだった



それは夢か幻か?

それとも……



ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ



奴良家の朝につららの悲鳴が響き渡っていった



[戻る]  [アンケトップ]  [次へ]