おまけ

にこにこにこにこ
嬉しそうに部屋へと引き返している途中
「あ、そうだ!」
と、突然リクオが声を上げて立ち止まった
「ど、どうしました!?」
それまで一緒になってにこにこと笑っていたつららは、声を上げて突然立ち止まってしまったリクオを見下ろすと、心配そうに顔を覗きこんできた
おどおどとリクオの様子を伺っているつららを余所に、リクオは何を思い出したのか普段着である着物の袂をごそごそと探りだし始めた
暫くその様子を何事かと見守っていたつららに、リクオはくるりと振り向くと
「これ、お前にやる!」
と言いながら袂から取り出したものを、ずいっとつららへと押し付けてきた
「え?」
その突然の行動に、つららはリクオを見下ろしながら不思議そうに首を傾げる
「色々手伝ってくれたお礼だよ!」
「あ、リクオ様!」
その鈍感な仕草に痺れを切らしたリクオは、袂から取り出した物を無理矢理つららの手の中にねじ込むと、そう叫びながらパタパタと走り去って行ってしまった
つららの呼び止める声を振り切りながら、廊下の角を曲がる途中「大事にしろよな!」と言うのを忘れずに
そして
つららが握り締めていたその手の中には――

一輪の花

しかも折り紙で作られたカーネーションの花

それは最初、リクオが母へと贈るのを断念したものだった
何度も何度もチャレンジしてできなかったもの
泣く泣く諦めたそれが、今つららの手の中にあった
形は不恰好だったけれども、きちんと手本通りに折られていたそれ

それは小さな手で頑張った証
それは贈りたいと必死に想った証

その優しい真心につららは口元を綻ばす

「ありがとうございます」

ぎゅっと、壊さないように胸元でその花を抱き締めながら
深く深く心の中で感謝した



いつもお世話になっているあの人へ

感謝の気持ちを込めて



Thank you always





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