『とある夜の小さな出来事@』の続編です


チュンチュンと小鳥がさえずる鳴き声が聞こえる
ああ朝だわ、とつららは眠い目を擦りながら体を起こした
のだが――
何故か体が動かなかった
と言うよりも何かに拘束されているような感覚に思わず閉じていた瞼を勢いよく開けた
一気に覚醒した頭で見たものは――


誰かの胸元だった
しかも浴衣の襟元が肌蹴け、薄い胸板が見えている


ああ、これはリクオ様のだわ


とすぐさま認識できたのは流石と言うか何というか・・・・
幼少の頃より見守ってきたつららにとってはリクオの体の一部を見ただけですぐにわかってしまうらしい
一瞬安堵の息を漏らすも、はたっとつららは気づいた


え〜と・・・何故ここにリクオ様の胸元があるのかし・・・ら!!!!


次の瞬間ボンと言う音が聞こえるほどつららの顔が真っ赤に染まる
な、ななななな・・・何ですかこの状況はぁぁぁぁぁ!?と内心絶叫しながらつららは慌てふためいた
見上げるとリクオの丸みを帯びた顎のラインが見えた
しかも、リクオはまだ眠っているらしくスースーと静かな寝息が聞こえてくる
つららは慌ててリクオの腕から抜け出そうともがいたが、体にしっかりと回された腕は外す事ができなかった
う〜ん、う〜んと何度外そうとしてもビクともしない
しかも外そうとすればする程させるものかとがっちりとホールドしてくるのだ
困り果てたつららはリクオを見上げながら外には聞こえないように小さく呼んでみた
「若、若〜、起きて下さい、動けませんよ〜」
顔を真っ赤にしながら呼びかけると、リクオが「んん」と言いながら身じろぎした


ひいぃぃ〜!ち、近っ!近いですぅぅ〜!!


リクオが顔を下げたお陰で、突然至近距離になったリクオの顔につららは小さく絶叫する
心臓が、心臓が、とふるふる震えるつららにようやくリクオが気づき、うっすらと目を開けてぼんやりとつららを見つめてきた
つららはやっと起きてくれたとほっと胸を撫で下ろしていると
「ん〜、つらら?」
リクオは寝ぼけ眼の声でつららを呼んだ
「はい、リクオ様おはようございます」
つららは律儀にも挨拶をすると、これでようやく拘束から逃れられるとほっと息を吐いた
しかし、つららが良かったと安堵したのも束の間
「あれ?またつららが出てきてくれた」
リクオはへにゃりと嬉しそうに笑いながら、ぎゅうっとつららを抱きしめてきた
しかも、愛おしそうにおでこにキスまでしているではないか
気を抜いていたつららはリクオの突然の行動にパニックになる


「きゃあぁぁぁぁぁ!リクオ様のえっちぃぃぃ〜〜!!」


大声で叫ぶと、バシィ!!とリクオの頬を思い切り叩き、つららは無我夢中でその場から一目散に逃げていった
そこに取り残されたリクオはと言うと・・・・


「んん?痛っ、は、はれ?つららは?」
と、夢からまだ醒め切らぬ頭で真っ赤に手形の付いた頬をさすりながら、夢の中であんな事やこんな事をしようとしていたつららを探していた
その後――
何故かリクオの起床係を暫くの間、首無と代わってもらうつららの姿があったとか?



思春期の若様の寝起きにはご用心


『とある朝の小さな出来事A』


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