さて、それから数日後

またしても絶叫が響いていた

とは言っても本当に辺りに響いたのではなく

それは、とある少女の胸中でだけ響いていた



凄いもの見ちゃった!!



カナは真っ赤になった顔を両手で隠しながらそこから背を向けた

とんでもないものを見てしまったと胸中で絶叫する

今日は久しぶりに清十字団の集まりは無かった

しかも、読モの撮影も無かった

久しぶりに空いた放課後

最近疎遠になりがちな幼馴染とたまには一緒に帰ろうかと玄関で待っていた

しかし、待てども待てども幼馴染の姿は一向に現れない

既に帰ってしまったのかと、下駄箱を確認するとまだ靴があった

それではいつものように雑用を頼まれているのかと教室に戻ってみたが誰も居なかった

何だか心配になって探していたら見つけた

しかも屋上で

しかも幼馴染は一人ではなかった

リクオの側には及川さんが居た

それはいつもの事

当たり前の景色

最近二人が恋人同士とわかってからは特に気にすることもヤキモチを焼くことも無かった

しかし――



まずいもの見ちゃった



どくりと胸が鳴った

見てはいけないものを見てしまった

というか、何でこんな所で?

カナは尤もな意見を胸中で呟いた

背後の二人の気配が気になってしょうがない



聞こえてくる声に胸がドキドキした

聴こえてくる音に全身が熱くなった



「あ……あ、リクオ……さま」

「く……つらら」



ドクリ



こ、こここここれって!?!!



見えたのは一瞬

見た瞬間体が勝手に後ろを向いていた

見てはいけないと頭の中で警笛が鳴った



見てはいけない

見てはイケナイ

ミテハイケナイ

見たら……



マズイ



こ、恋人同士だから当たり前よね?



カナはパニックになった頭で、とんでもない事にうんうんと頷いていた



恋人同士だから仕方がない

恋人同士だから大丈夫

恋人同士だから……



てか、私達ってまだ中学生でしょ〜〜〜〜!!



夕闇迫る校舎の屋上で幼馴染の情事を目撃してしまった少女の胸中での絶叫が音も無く響き渡るのであった



おまけ

「お?リクオ、おめえ新しい鬼纏の印があるじゃねえか?これ誰のだ?」

湯けむりの立ち込める大浴場で、久しぶりに遊びに来た義兄弟の疑問の声が背中越しにかけられた

その言葉に、頭を洗っていたリクオは顔を上げ背中に付いたその跡を見るや

にやり

「ああ、これか?これは可愛いじゃじゃ馬を鬼纏った時に付いたやつさ」

そう言って答えるリクオの顔は何処か愉しそうであったとか






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