昼休み前に顔も見たことも無い知らない生徒に放課後会って話がしたいと呼び止められた

つららはすぐさま断ろうとしたのだが、その相手は言いたい事だけ言うと逃げるようにどこかへ走って行ってしまった

結局その場で断ることが出来なかったつららは、渋々相手の指定する場所へ放課後向かったのだが

案の定、今回も告白の呼び出しだった

リクオに矛先が向かないように丁重にお断りし、急いでリクオの元に向かったつもりだったのだが……



迎えに来るのが遅すぎたみたいです……



既に薄暗くなりかけた空をちらりと見上げながらつららは肩を落とした

「ふ〜ん、どうだか?」

どこか棘のある探るような問いかけにつららは、はっと気づき目の前の主を見上げた

「そ、そんな……ちゃんと断ってきました」

「ふう〜ん僕の側近なのに、その主を置き去りにしてまで会いに行ってたのに?」

信じ難いね、と目で訴えてくるリクオにつららは困り果てた



どうやったら信じてもらえるのでしょうか?



じっと見つめる主の瞳は怒りに燃えていた

自分に向けられるその視線に耐えられなくなり視線を逸らしたその時――



「無理やり呼び出して来たんだろう?そんなの無視して良かったんだよ」



どこか拗ねたようないじけた様な主の声が聞こえて来た

「で、でも……」

「呼べば来てくれるって変な噂が広まったら困るのはお前だよ?」

尚も何か言おうとしたつららは、次に発せられたリクオの言葉に息を飲んだ



そこまで考えていなかった



リクオに変な矛先が行かないようにと、ただそれだけしか考えていなかった

リクオの言う通り、この先も呼び出されることが増えるかもしれない

そう思った途端つららは恥ずかしくなった



「す、すみません」



そこまで考えてくれていたリクオに、つららは謝る術しか持ち合わせていなかった

勝手な自分の思い込みで主に更に迷惑をかけてしまうかもしれないと、つららは己の浅はかな考えに唇を噛んだ

そして誠心誠意心を込めて「申し訳ありません」と再度頭を下げた

そんなつららにリクオは――



「ダメ、許さない」



首を縦には振らなかった

「そ、そんな」

つららはいよいよ以って困り果てた



本当にどうしたら……



つららが頭を悩ませていると、リクオがまた口を開いた

「つらら、罰が必要だね?」

リクオはそう言うと、一歩つららへと近づいていった

「え?」

その言葉に反射的につららは後退る

「お前は口で言っても分らないから」

「あ、あの……」

一歩、一歩、つららとの距離を縮めていく

「つらら、覚悟は良い?」

「り、リクオ様!?」

リクオの言葉に震え上がるつららの両肩をがしりと掴むと、リクオは至近距離まで顔を近づけてくる

「おしおきだよ」

そして耳元で囁くと



かぷり



リクオはいきなりつららの首筋に噛み付いてきた



「へ?」



突然のリクオの行動につららの目が点になる

そして



ちゅっ



小さな音が聴こえたかと思ったらリクオが徐に首から離れていった

じんわりと痛む左の首筋

甘い痺れを生むそこを指先で触れる

怪我はしていないようだった

歯の痕も傷も無く血すら流れていないのにちりちりと痛む首筋

何をされたのかと首を傾げていたつららは

次の瞬間



真っ赤に染まった



ぼっと、音が出る程の勢いで顔を真っ赤に染めたつららは急に狼狽えだし

「なんですかこれは〜〜〜??」とリクオに向かって叫んでいた



リクオに詰め寄るつららの姿が教室の窓に映る

暗くなった景色のお陰で鏡の役割を果たすその窓には



真っ赤に染まった顔と首筋に紅い痕をつけたつららの姿が写っていた



「あ、明日から学校行けないじゃないですか〜〜!!」

「マフラーで隠せばいいじゃないか?」

「そ、そんな・・・・ていうか何でこんな事するんですか〜?」



「だからおしおきだって」



詰め寄る側近にそう答えるリクオの表情はどこか楽しそうだった



悪い虫がつかないおまじない



だってお前は僕の……






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