ぼふん

突然聴こえて来たその音と大量の煙
驚いて振り返った全員が唖然とした

そこには――



突然部屋の中で爆発音がしたかと思ったら、突然溢れ出てきた大量の煙
その煙を掻き分けていた屋敷の妖怪達は、こつぜんと現れたソレに目を丸くした
その場に居合わせた全員が、食入るように見下ろすその視線の先には――

毛倡妓

しかも何故か幼児の姿になっている
「け、毛倡妓だよね?」
「な、なに?何がどうなってんだ〜?」
「うわ〜衝撃だなこれは・・・」
「き、紀乃?」

その姿に皆驚きの声を上げた

わいわいと皆思い思いの言葉を発しながら毛倡妓であった幼女を取り囲むように見下ろす
幼児の姿となった毛倡妓は周りを取り囲む屋敷の妖怪たちを見て怯えているようだった
その証拠にこちらを見上げる幼女の肩が小刻みに震えていた
「な、なんか怯えてない?」
「ああ、そうみたいだな」
「う〜ん、変化した・・・訳じゃないみたいだな」
びくびくと震えながら自分達を見上げる毛倡妓に、仲間の妖怪達は顔を見合わせる
そこへ、首無が一歩前へ出てきた
その途端、毛倡妓の顔がぱあっと明るいものへと変わった
首無は毛倡妓の前にしゃがみ込むと、目線を合わせながら話しかけた
「俺のこと、わかるか?」
「あい」
その懐かしい返答に首無は一瞬目を瞠る
「じゃあ、自分の事は?」
恐る恐る聞いてきた首無の言葉に、毛倡妓は首を少しだけ傾けながらこう答えてきた
「あちきは紀乃でありんす、この前9歳になりました」
その答えに首無の顔色がさぁっと変わっていった
「ま、まさか・・・」
「どうしたの首無?」
震える声で呟いた首無に、背後からリクオが心配そうに声をかけてきた
その問いかけに。、ギギギと油の切れたブリキ人形のように無い首を回しながら首無がゆっくりと振り返り
そして

「こ、子供に戻ってます」

「え……」



「「「えええええええええ!!!」」」



首無の口から衝撃的な言葉が発せられたその瞬間、大絶叫とも言える驚きの声が上がった
「な、なんで?どういう事だ首無」
「わ、私にもわかりませんよ」
詰め寄る仲間の妖怪たちに、首無も分らないと頭を振る
そこへ

「ふぇ・・・」

背後から小さな声が聴こえてきた

ばっっっ

その声に皆一斉に振り返る
次の瞬間

「な・・・」



「なに〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」



今度は屋敷中を揺るがすような大絶叫が響き渡った

そこには――



幼児の姿になったつららがいた





奴良家きっての一大事

みな慌てふためき、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ
先程からこの事態をどうにかしようと屋敷中の妖怪達が右往左往していた
あまりの緊急事態に普段はぼーっとしている3の口でさえもあたふたしている始末
みな浮き足立ちどうしたら良いか分らず頭を抱えていた

「と、とりあえずさっき鴆君呼んだから、みんな落ち着こう」

この場を収拾するべくリクオが一歩前に出て声を張り上げる
その途端、辺りはしーんと静まり返った
みな一斉にリクオに視線を向ける
その視線を浴びながら、なんとか騒ぎが治まった部屋をリクオは見回した

皆かなり慌てていたせいか、呆然と立ち尽くす下僕達の姿は実に妙だった

何を勘違いしたのか頭に蝋燭を立てて祈祷している者
箒とハタキを持って身構えている者
さらには病気の時に使用する桶と氷嚢を用意している者

リクオの視界に映るのは、まさに奇妙奇天烈極まりない格好をしている者ばかりだった
その姿にリクオは小さく嘆息すると、それぞれ片付けるよう指示を出す
主の言葉に皆我に返り、殆どの者が照れ笑いをしながらそそくさと部屋を退室していった
そしてその場に残ったのは、いつものメンバー

首無と青田坊と黒田坊
それに河童が残っていた
そして・・・・

部屋の真ん中にぽつんと立つ小さな影
一人は毛倡妓
そしてもう一人は

つらら

だった
リクオはその二人を見て「はぁ〜」と盛大な溜息を吐いた
己の側近でもある二人の女妖怪は、今は幼児の姿になっていた
しかも自分達を見上げながら、おどおどと怯えているではないか

毛倡妓は妖怪になる前の姿に
つららは子供の頃の姿に

しかも、二人とも姿だけではなく頭の中まで過去に戻ってしまったらしい
先程からリクオ達が質問する内容に二人とも首を傾げていた

「ええっと、とりあえずさっきの続きをしよう」
溜息混じりにリクオは隣の首無へと視線を向ける
首無も「はい」と頷くと、今度はつららへ向き直った
「雪女」
「はぁい」
いつもよりも大きい円らな瞳にキョトンと見上げられ、首無は一瞬押し黙った
「え〜、コホン・・・ここに知っている者はいるか?」
首無の言葉につららはぷるぷると首を振る
「じゃ、じゃあ君の名前は?」
詰め寄るようにリクオが前に出る
「・・・・知らない相手に名前を言ってはだめだってお母様が言ってました」
その警戒する様な目つきにリクオはがくっと項垂れた
「リクオ様、たぶんつららはここへ来る以前の姿になっているようです」
落ち込むリクオを慰めるように首無が付け加える
「うん、そうみたいだね・・・・」
どんよりと暗い表情をしたリクオが力なく頷いた
そこへ
「お母様はどこですか?」
無表情のつららがリクオに聞いてきた
「え?」
リクオはきょとんとつららを見下ろす
その真剣な瞳にうっと言葉が詰まった

つららの母

そう言えばリクオはつららの母――雪麗の姿を見たことは無かった
自分の知らぬ女を恋しがり居場所を聞いてくる目の前の幼女に何も言えなかった
「ごめんよ、僕君のお母さんの居場所知らないんだ」
そう言ってリクオは眉根を下げて謝った
その途端、しゅんと項垂れるつらら
しかも大きなその黄金の瞳が膜を張り、ふるふると震えていた
今にも泣き出しそうなその姿に一同ぎょっとする
慌ててつららへと言い募った
「お、お母さんす、すぐ帰ってくるよ」
「そ、そうそう・・・ちょ、ちょっと用事ができて今はいないけど」
もちろん真っ赤な嘘である
しかしその嘘につららはぱあっと顔を明るくした
「ほんと?」
「ほんと、ほんと」
「じゃあ、いつ帰ってくるの?」

う・・・・

一同ひやりと冷や汗を流す
なんて言えばいいんだと、皆が顔を引き攣らせていると

「だめでありんす」
横から声が聞こえてきた
見ると、眉を吊り上げて怒ったような毛倡妓・・・もとい紀乃がつららを見ていた
「お母様に用事があるのならちゃんと大人しく待っていなきゃだめでありんす」
その力強い言葉につららは目を瞠りながら、こくりと頷いた
「わ、わかった」
怯えるようなその視線
年上のしかも女の子に言われてしまい、つららはそれ以上何も言えなくなってしまったのか、そのまま黙って俯いてしまった
そして紀乃はといえば
「良い子でありんす、これあげるでありんす」
と懐から飴を取り出してつららへと差し出した
「ありがとう」
途端、つららの顔は笑顔に変わり嬉しそうに飴を受け取る
その様子を固唾を飲んで見守っていた大人たちは「ほぉ〜」と盛大な溜息を吐いてその場に崩れ落ちた
「と、とにかく良かった、後は鴆君が来てくれれば」
リクオはそう言いながら、まだ来ぬ義兄弟へ早く来てくれと心の中で呟くのであった





「あ〜悪ぃ悪ぃ」
薬鴆堂の当主こと鴆は、屋敷へ上がるなりいきなり謝罪してきた
「え、どういう事、鴆君?」
リクオは何やら嫌な予感を覚え鴆に訳を聞いてきた
「いや〜、この前二人が体調が良くないって言うんで昨日、薬置いていったんだが……」
「ま、まさか・・・・」
鴆の言葉に頬が引き攣っていく
「間違えて若返りの薬置いてっちまったんだこれが」
いや〜悪い悪いと、あははは〜と笑って誤魔化そうとする鴆に

ごいん

リクオの右ストレートが炸裂した
「へぶっ・・・リクオてめえ、いてーじゃねーか?」
「ああ?鴆おめえのせいなんだから当たり前だろう!」
鼻血と吐血で血だらけになりながら鴆が怒鳴り返すのを
リクオは半眼で睨み返してきた
しかも昼なのに何故か夜の姿へと変じているではないか
突然妖怪へと変化し己を睨みつける義兄弟に鴆は頬を引き攣らせた
「ま、まあ・・・すぐ解毒剤作るからよ」
「当たり前だ」
間髪入れず返してくる不機嫌なリクオに鴆は冷や汗を流す
「じゃ、じゃあ俺はこれで」
家帰って薬作らなきゃ、とそそくさとこの場から逃げようとする鴆をリクオが引き止めた
「ちょっと待て、薬ができるのはいつになるんだ?」
その言葉に鴆がうっと呻いた
その声を聞き逃さなかったリクオは眉を跳ね上げると、ずいっと鴆に詰め寄る
「なんだ鴆、なんかあるのか?」
「あ、いや・・・その・・・・」
明らかに挙動のおかしい鴆の首を、リクオはがしりと捕まえた
「いつになるんだ?」
みしり、という音と共にニコリと笑顔を向けながら言うリクオの顔は

怖い

何故か般若の顔と重なって見えてしまった鴆は、冷や汗を大量に流しながら締め付けられた喉から声を必死に絞り出して言ってきた
「い・・・」
「ん?なんだ」
「一週間は・・・かかる」
必死にもがきながらそう一言いった鴆にリクオは

キュッ

さらに指に力を込めて首を絞めてやった
「クェッ」
あまりの苦しさに鴆は堪らずボフンと元の姿に戻る
そして羽毛に覆われた細い首をぎゅっと握り締められたまま、ぶくぶくと泡を吹いて気絶してしまった
「リ、リリリクオ様!!」
その様子を遠巻きに見ていた側近達も、くたりと首を垂らしたままピクリとも動かなくなってしまった鴆の顔色がどす黒いものへと変わった瞬間「これはまずい!」と慌てて止めに入った
「お止めください鴆様が本当に死んでしまいます」
「ちっ、しゃあね〜な・・・おい、鴆一週間も待てねえ三日で作れ三日で!」
リクオは項垂れたままの鴆に向かってそう言うと、不機嫌に足音を響かせて部屋から出て行ってしまった
そして
その場に居合わせた側近達はお互い顔を見合わせる

「こ、これからどうする?」
そしてちらりと部屋の隅を見遣り盛大な溜息を吐いた
そこには――ぽつんと部屋に取り残されこちらを心配そうに見つめる幼女達がいた



「はぁ」

「はぁぁ」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

爽やかな朝
空気は澄み雲ひとつ無い清々しいその朝に、似つかわしくない重い溜息が響いていた
毎朝恒例の食事風景
家族揃っていただきますの合掌をする中
大広間の片隅に見慣れない小さな人影が二つ

紀乃と氷麗が小さな手をちょこんと合わせていただきますの挨拶をしていた
遠巻きにその可愛らしい姿を虚ろな瞳で覗いながら、リクオは力なく溜息を零していた

あれから一日
幼児へと若返ってしまった二人は、あの後屋敷の女衆たちのお陰でなんとか落ち着くことができた
驚き慌てるばかりだった男妖怪とは反対に、女妖怪達は小さくなってしまった毛倡妓とつららを見るや悲鳴を上げていた

「キャー可愛い♪」
「本当、ちっちゃ〜い♪」
などなど、何故か嬉しそうに騒ぎだした
「あらあら、これじゃあ可哀相ね。待ってて、良いの持ってきてあげるから」
そして、ぶかぶかになってしまった二人の着物に気づくや一人の女妖怪が何処から出してきたのか可愛らしい子供用の着物を持ってきた
それを口火に、他の女妖怪達が一斉に騒ぎ出した
「いや〜ん似合う〜!」
「これもあったわよ〜」
「あら、これも可愛いわ〜どれにしようかしら?」
あれよあれよと言う間に、着せ替えごっこが始まった
赤やピンク、花や蝶など女の子特有の可愛らしい着物を二人に合わせながら、あれでもないこれでもないと女衆たちは首を捻る
その剣幕に違う意味で幼女達は怯えるのであった

とまあ、そんなこんなで二人の幼女達は色々な目にはあったものの、女達の優しい(?)介助の下何の不自由も無く朝食にありつくことが出来ているのであった
とりあえず二人の事は女衆たちに任せていれば安心だ
身の回りの世話もここでの生活も全部彼女達が教えてくれるだろう

しかし……

リクオはそこまで考えて小さく溜息を吐いた
ちらりと朝食を頬張る幼女達を見遣る

早く元に戻さないと後々面倒だぞこれは

はぁ、と盛大な溜息を零したリクオの周りでは
可愛らしい幼女姿になってしまった紀乃とつららを、頬を染めながらちらちらと盗み見る下僕達の姿があった





「なん……だ、あれはぁ?」

本家勤めを解任され、晴れて捩れ目山へと帰る事が許された牛鬼組若頭は
牛鬼の使いで久々に訪れた本家の門をくぐるや否や驚愕の声を上げていた

目の前には雪ん子



の子供?

と思わず疑いたくなるほど雪女に似た童女が居たからだ
「いらっしゃいませ、ようこそお越しくださいました」
童女は牛鬼組若頭こと牛頭丸に向かってぺこりと頭を下げてきた
「牛鬼組若頭の牛頭丸様ですね?」
「あ、ああ」
「こちらへ、ご案内いたします」
驚く牛頭丸を他所に、雪女似の童女は慣れた様子で相手をしてきた
その手馴れた童女の姿に、必要以上に慌てた自分が急に恥ずかしくなった
そしてたまたま雪女に似たこの組の下僕の童なのではと己の心を無理矢理納得させ
牛頭丸はとりあえず、このままここに突っ立っている訳にもいかないと思い言われるがまま屋敷に上がろうとした
そこへ
「足桶はこちらでありんす〜」

「ぶふっ!?」

今度は奥の廊下から妙に見た事のある童女が現れてきた
童女の言葉通り童女は足桶を抱えてきている
良く知る女にそっくりな童女を二人同時に目撃してしまった牛頭丸は、脱ぎかけた草履もそのままに思わず後ろに飛退いた

「な、なんなんだお前達は!?」

そう叫ぶのも無理はないだろう
それ程に目の前の童女達はあのリクオの側近達に似ていたのだった
そして、真っ青になって叫ぶ牛頭丸に童女達は
「何のことでしょう?」
「なんでありんすか?」
きょとんと大きな瞳をくりくりさせて首を傾げてきたのだった
「ふざけんな!なんの悪戯だ!?」
とぼける二人に牛頭丸は声を荒げて怒鳴る
「どうしたの一体?」
そこへ
騒ぎを聞きつけてリクオがやってきた
「あ、お前!こいつらなんなんだ?」
突然やって来たこの屋敷の主に、牛頭丸は少しだけ安堵した表情を見せると、今度は掴みかからん勢いでリクオへと詰め寄った
胸倉を掴まれ至近距離で睨んでくる若頭に、リクオはずり落ちた眼鏡を直すと明後日の方を向きながら冷や汗を流す
そして――

「え?あ〜〜、えっとぉ……話せば長くなるんだよね」

ぽつりと言い辛そうに頬をかきながらリクオは呟いたのであった



「ふ〜ん、それであんな姿になったっつ〜わけなんだな?」
あれから半時、奴良組屋敷の客間の一室から牛頭丸の声が聞こえてきていた
「うん、まあそういう訳なんだ」
ジト目でこちらを見てくる牛頭丸に、リクオは眉尻を下げながら頷く
「あれが雪ん子ねぇ〜」
牛頭丸はリクオに向けていたジト目を、今度は隣の部屋へと向けた
そこには、紅葉のような手で一生懸命洗濯物を畳むつらら達の姿があった
せっせ、せっせと慣れない手つきで洗濯物を畳む姿は実に微笑ましい
いつしか牛頭丸はその鋭い視線を、ほわぁ〜んと柔らかなものへと変えてつらら達を見ていたのだった
「あの……牛頭丸さん?」
リクオはその視線に気づくと、頬を引き攣らせながら牛頭丸の肩を叩く
はっと我に返った牛頭丸は、垂れていた涎を袖で拭いながらキッとリクオを睨みつけた
「べ、別に、か、可愛いなんて思ってねーからな!」
そう噛み付きそうな勢いで言ってきた牛頭丸の頬はほんのりと赤い
その時――

「くすくす、無理しちゃって〜牛頭ってばちっちゃい子、好きなくせに〜」

聞きようによってはかなりアレな発言をしてきたのは、突然牛頭丸の袖の下からにゅっと現れてきた馬頭丸だった
「なっ、お前どこから!?」
突然の馬頭丸の登場に、牛頭丸はぎょっとしたような顔をして後ろに飛退いた
「あはは〜牛頭丸ったらおかしい〜〜」
そんな牛頭丸を腹を抱えながら馬頭丸が指差す
「な、てめぇ、ていうかさっきのは何だ!」
「へ?牛頭丸が幼女好きだってこと?」
猛犬の如く馬頭丸の胸倉を掴んで吠えてきた牛頭丸に、馬頭丸は他人が聞いたら激しく勘違いされてしまいそうな事を言ってきた
「な、な、な……」
馬頭丸の言葉に牛頭丸は口をパクパクさせる
それ以上動かないと踏んだ馬頭丸は、ぱっと牛頭丸から離れると、さっとリクオの後ろへと隠れてしまった
そして
「だって〜牛頭丸、昔は近所の子供たちとよく遊んでいたじゃないか〜」
怒られるのが怖いのか、馬頭丸はリクオの背中からトレードマークの馬の骸骨を覗かせながらそう言ってきた
「ばっ、あれは、その……なんだ」
馬頭丸の言葉に、牛頭丸は更に顔を赤くして怒ったが、しかし最後の方はごにょごにょと何を言っているのかわからないくらい小さな声になってしまった
「て、いうか何でお前がここにいるんだよ」
牛頭丸はバツが悪そうにゴホンと一つ咳払いすると話題を変えてきた
その言葉にリクオも馬頭丸を仰ぎ見る
「え〜だって僕、若頭の補佐役だもん」
牛頭丸が心配で付いて来たのさ〜、とさも当前のように答えてきた
その言葉に

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

牛頭丸の背後に、なにやら真っ黒な暗雲が渦巻いてきた
「め〜〜ず〜〜ま〜〜る〜〜!!」

ピシャーーーーーン

次の瞬間、牛頭丸の雷が馬頭丸に直撃した
「うわ〜んごめんなさ〜い」
「ふっざけんな!そんな理由で付いて来てあんな事言ってんじゃねぇぇ〜〜」
ドッタンバッタンと追いかけごっこが始まってしまった牛鬼組の二人に、リクオははぁと盛大な溜息を零すのだった





結局、暴れるだけ暴れてすっきりした牛鬼組の二人は、ケロリとした顔をして帰っていった
「またおいでください」
「またおいでくんなまし」
門を出て行く二人を幼女達は深々と頭を下げて見送る
見送る幼女達の手の中には持ち切れないほどの飴があった
もちろん帰っていった若頭が、頬を染めながらそっぽを向いて手渡していったものである

そんな微笑ましいやりとりを、少し離れた場所で見ていたリクオは、またしても複雑な表情を作りながら溜息を零していたのであった



そしてそれから3日後
ようやく鴆から約束の薬が届いた
受け取った三羽烏の話では、鴆はいつもよりも三倍やつれた姿でしかも吐血しまくったのか、その顔色は青を通り越して真っ白になっていたとかいなかったとか
兎にも角にも薬は届いた
リクオはこれでやっと二人が元に戻ると心底喜んだのだった
そして、隣の部屋で静かに昼寝をしている幼女達の元へと急いだ
しかし――

う……

リクオは思わず怯んだ
手に入れた解毒剤の小瓶を持つ手がプルプルと震える
リクオの目の前には――

幸せそうに眠る二人の童女

て……天使!!

リクオの顔から鮮血が飛び散った
鼻を押さえた手の隙間からボタボタと赤い液が流れ出ていく
「どうしましたリクオ様!?」
そこへ、リクオと同じように薬を待ち侘びていたもう一人の男が痺れを切らして声をかけてきた
「リクオ様が飲ませないのなら俺がやります」
なかなか動こうとしない主から薬をもぎ取ると、痺れを切らせた首無がそう言いながら前へ出た
その瞬間――



か、可愛い!!



゚★。.:*:・'゚☆。. ほわあぁぁぁぁぁぁぁん ゚★。.:*:・'゚☆。.



「ダメだ、僕にはできない」
「すみませんリクオ様、俺にも無理です」

二人は顔の真ん中から大量の血を流し、目の前でスヤスヤと眠り続ける幼女を見ながらお互い首を左右に振り続けるのであった

ここに二人、幼女スキ〜誕生?



強制終了(笑)

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