『3Dマウスパット事件(昼リクオの場合)』



わいわい がやがや
妖怪屋敷の奴良家の居間が今日はいつにも増して騒がしかった
「ほ〜これがそれか?」
「結構小さいんだな」
わいわいと騒がしい部屋の中からはそんな声が聞こえて来ていた
ちょうど部屋の前を通りかかったこの屋敷の主人――奴良リクオ――は聞こえて来たその声に何事かと立ち止まった
からりと襖を開けて中を覗いてみれば下僕の妖怪達が所狭しと集まり部屋の中央に置かれた座卓へと視線を集めていた
「何やってるの皆?」
その様子を遠巻きに見ながら、いつもの着流しを身に付けた部屋着スタイルのリクオが皆へと問うと
「あっリクオ様、これ見てくださいよ!」
近くに居た下僕にそう言われ、リクオは誘われるままその部屋の中央へと移動していった

「何これ?」

リクオは部屋の中央――座卓の上に置かれていたソレを見るや上擦った声を上げた
リクオの視線の先
そこには

ご丁寧に透明な袋に入れられたつららがあった

もとい
つららの絵が描かれたマウスパッドがあった
しかも一部がこんもりと隆起している
そのあから様な物体を目の当たりにしたリクオの目は点になった
「なんでも”すりーでいまうすぱっと”とかいうモノらしいですぜ」
リクオが目を点にさせて固まっていると、足元に居た小妖怪たちがこの物体の名を嬉々として教えてきてくれた
「3Dマウスパットって……」

これが?

納豆小僧や小鬼達の説明を頭の片隅で聞きながら、リクオは目の前の物体を食い入る様に見つめていた
マウスパット自体は良く知っている
パソコンのマウスを使う時に下に敷くアレだ
しかしそれが何でまたつららなんだとリクオは訳が分らず首を傾げていた
しかも良く見れば胸の辺りが膨らんでいる……

!!!!!

ぼんやりとそのマウスパットを眺めていたリクオはある事に気づいた

こ、これってもしかして!?

リクオは徐にそのつららパットを手に取った

むにゅん

柔らかい……

リクオはつららの胸の辺りの盛り上がった場所を指先で突いた動作のままぷるぷると震えだす
「あら、いやですよ〜リクオ様、これ15歳以上じゃないと使えないんですからね」
リクオが青褪めて固まっていると、側に居た毛倡妓がくすくすと笑いながらそのマウスパットを取り上げてきた
「え?」
毛倡妓の言葉を聞いたリクオは思わず首をぐりんと向けて聞き返す
「コ・レ・殿方用に作られたものなんだそうですよ〜。ふふふ、リクオ様ったらもうおマセなんですから〜♪」
何を勘違いしたのか毛倡妓はそう言うとリクオの背中をバシンと叩いてきた
やはりというか何というか
その使用目的を理解したリクオは顔を真っ赤にさせて狼狽したのだが、先程言われた毛倡妓の言葉にはたと気付いた
「え?いや違……これちがっ……」
「いいですいいです、わかっておりますから♪これは後でこっそりとお部屋の方に置いておきますから、ね♪」
リクオが必死に言い訳を言おうとしたのだが、毛倡妓はそれよりも早くリクオにそう囁くとそのつららパットを懐に仕舞い込んでしまった
「あ〜毛倡妓ずるいぞ!俺達ももっと見たかったのに〜」
「あらあらごめんなさいね、でもこれはもうお終い。さあさ、みんな仕事しましょ!」
手を叩いて仲間達を催促した毛倡妓はリクオに一瞬振り向くとウインクをしながら部屋を出て行くのであった
ぞろぞろと部屋を出て行く下僕達
一人取り残されたリクオはと言うと――

「違うってばもう……」

顔を真っ赤にさせたままぽつりと呟いていた

(思春期昼リクオ様の苦悩です(笑))





『3Dマウスパット事件(夜リクオの場合)』

夜空に浮かぶ月が輝き始めた夜半時
夕食を終え自室へと戻ったリクオは明日の授業の用意をしようと机に向かっていた
そこでふと机の端に目が止まる
「・・・・・・」
リクオはそれを手にするとじっと見つめた
ふとそこでリクオは徐に顔を上げる
そのマウスパットを持ったままふらりと部屋を出た
途端

「あっリクオ様、今床の用意をしに……ってな、何?なに?なんですか??」
「つららいい所に、ちょっとこっちに来い」
「へ?あ……きゃっ」
リクオは丁度部屋へとやって来たつららを捕まえると引き摺るようにして部屋へと連れ込む
そして――

むにっ

つららのその胸を鷲掴んで来た

「!○△□%$#*??」

途端つららの顔はぼんと音を立てて真っ赤に染まる
そして声にならない悲鳴を上げた
「うむ、違うな」
リクオはつららの胸を鷲掴んだまま片方の手に持っていたマウスパットと比べる

見た目もそうだが手触りもやはり違うな

リクオは胸中でそう呟きながら右手の柔らかい膨らみはそのまま離さなかった
「リ、リクオ様〜〜〜〜〜〜!!!」
むにむにと執拗に胸を揉んでいると、その胸の持ち主が絶叫してきた
顔を上げると真っ赤になって涙目になったつららと目が合った
「なんだ?」
「なんだじゃありません!!」
リクオが首を傾げながら聞き返すと、つららは噛み付かんばかりの勢いで叫んできた
「何するんですかもう〜〜〜」
離してください!と未だ己の胸を鷲掴んでいるリクオの手を外そうと手を伸ばした
のだが

ベリッ

次の瞬間、そんな効果音が付いてきそうな衝撃を感じた
続いて左の胸元がすーすーしてくる
ふと下ろした視線に写った現実に声にならない悲鳴を上げた
つららの胸元――大きく開いたその着物の合わせからは、つららの胸がぽろんと零れていた
ふるふると揺れる乳房
それは何ものにも包み隠されること無くリクオの眼前に晒さていた
つららの時が止まった

え?なに?なにが起こって……

そう胸中で呟いていると混乱していた頭がようやく事の成り行きを理解し始めてきた
それは何のことは無い
つららがリクオの手を外そうとしたその時
それと同時にリクオが思い切り着物の合わせを強く引っ張ってきたのだった
片手とは言えそこは男の力
当然その力に容易く負けた布は素直に肌蹴け、その柔肌を男の目の前に晒け出した
小ぶりなその膨らみは瑞々しくぷるんとリクオの前で揺れている
その形を真正面から見ていたリクオは

むにゅん

直に触ってきた
またしても固まるつらら
思考は吹っ飛びその顔は赤を通り越して真っ青になっている
冷や汗がだらだらと流れている
そんなつららを物ともせずにリクオは「ふむ」と一つ頷くと確認するようにつららの胸を揉み上げた
「うむ、コレも無いな」
リクオはまだ左手に持っていたマウスパットを見ると納得したように頷く
「あん」
その途端固まっていたつららから艶のある声が聞こえて来た
見ればつららはぷるぷると小刻みに震えながら口元を袖で隠している
しかもリクオが未だ掴んでいる乳房ではその中心をその親指がくりくりと弄っていた
「リクオ様、や、やめ……」
はぁ、と吐息と共につららはリクオの腕を掴んで懇願する
その姿をちらりと視線だけで確認したリクオは

にやり

不適な笑みを見せてきた
彼の悪戯心に火が付いたようだ
リクオは手に持っていたマウスパットを机の上に戻すとその空いた手でつららの体を抱き上げる
「へ?」
驚くつららを見下ろしながらリクオは楽しそうに耳元に囁いてきた

「偽者と本物、どうにも違いが良くわからねぇ。つらら、お前できっちり教えてくれよ」

そう言うや否やリクオはにやりとまた笑むと、少しだけ開いていた襖をぴたりと閉じてしまうのであった



さて
つららとマウスパット
どちらがよりリアルだったのやら……



おまけ→
[戻る]  [アンケトップ]  [次へ]