三時のおやつ
美味い昼食を食べた後は眠くなる
愛しい妻の膝枕で昼寝
まさに極楽
リクオはこの時間が一番好きな時間だった
リクオは両目を閉じるとひんやりするその柔らかい腿に擦り寄る
「ふふ、くすぐったいですよ」
頭上からは甘く蕩けるような優しい声音で呟くつららの顔
ついでに耳掃除も、と夫の耳の中を覗き込みながら言ってくる妻にリクオは口元に笑みを作った
「だって気持ちいいからつい、ね」
嫌かい?と視線だけで訴えてくれば
いいえ、と弧を描いた視線が返ってくる
それに気を良くしたリクオは
さわり
直ぐ側でおいしそうに揺れるその臀部を触った
「きゃっ」
「痛っ」
同時に聞こえる悲鳴
「ああ、リクオ様すみません!!」
妻の焦ったような慌てた声が聞こえて来た
リクオがおいたをした際、驚いたつららはつい耳かきを奥までつっ込んでしまったらしい
幸い怪我は無かったが耳の奥を突かれたリクオは、痛みに堪らず飛び起き耳を押えて悶絶していた
自業自得なのは言うまでもないが、優しい妻はそんなリクオを優しく介抱する
「本当にすみませんリクオ様。お怪我はないですか?」
リクオの耳の中を覗き込みながらつららは必死に謝ってくる
「ははは、大丈夫大丈夫」
リクオもまた自分が引き起こした事に強くは出られないらしく、痛みに引き攣る顔を何とか誤魔化しながら妻に大丈夫だと答えた
「み、耳掃除はもういいからこのまま膝枕して」
リクオはやっと痛みの治まってきた耳を擦りながらつららにそう言うと、またごろんと膝の上に頭を乗せてきた
「はい、申し訳ありません」
尚も謝ってくる妻にリクオは苦笑を零すと
「じゃあお詫びに触ってもいい?」
「へ?」
リクオは言うや否や、返答を待たずしてつららの体をさわさわと触り始めてきた
「う〜んこの感触♪」
頭の下にある弾力のある太腿を嬉しそうに触ていた
さわり
「きゃ」
今度は腕を伸ばし先程触った臀部をさする
さわり
「ひゃっ」
手を少し上に持っていき、その細くくびれた腰を掴むように触った
つつつ
「ひゃうっ」
そのまま指先で背筋をなぞっていく
しして
むに
「ちょ、ちょっとリクオ様!」
上げた腕を横に滑らせその柔らかい膨らみを鷲掴みにした
これにはつららも驚き抵抗したのだが
「つらら……しよっか?」
にこにこと笑顔を作りながら体を起こしてきたリクオは甘えた声でそう言うと
ゆっくりとつららの体に覆い被さっていった
夜
今夜は定例会議のある日
リクオの側近達が集まる中、そいつはやって来た
「よう、久しぶりだな猩影」
リクオは妖怪の姿で関東大猿会の若き組長を迎え入れる
「これは、三代目!わざわざすみません。と、つらら姐さ……いえ奥方様も」
「猩影君久しぶり」
現総大将との挨拶もそこそこに、その横に立つ女性に気づいた猩影は嬉しそうに相好を崩しながら挨拶をしてきた
その姿にリクオの秀麗な眉がぴくりと跳ね上がる
「会議は直ぐ始まる。つらら、お前は準備を頼むぜ」
「はい!それでは猩影君またね」
「あ、はいそれではまた」
意図的に妻を隠すように一歩前に出たリクオに猩影は知らず眼光を鋭くした
いそいそと小走りで去って行くつららには気づかれないように長身の男二人の間で火花がぶつかり合う
「今や、つららは側近頭兼俺の嫁さんだ。まあ何かと失敗もするかと思うが妻をよろしく頼むぜ」
にやり
わざと妻の部分を強調して言うリクオに猩影の頬がぴくんと引き攣った
「ええ、奥様……つららの姐さんは昔っからおっちょこちょいですからね。俺は男でタッパもあるし、姐さん一人支えて抱きかかえる位どおって事無いですよ、お任せ下さい」
にこにこにこにこ
こちらもわざと強調して言ってきた
「ほお?何処をどうやって抱きかかえるんでぃ?」
「ははは、ムキにならないでください。例えですよ、た・と・え」
至近距離で顔を近づけ合う二人
「ほお?例えねぇ」
「はい♪」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ......
ふふふふ、と笑い合う二人の間には、バチバチと見えない火花が散っていた
とまあ、この様に結婚した事によって夫の妻への『独占欲』や『欲望』が強くなる、と言ったことは良くあるケースである
しかし、これには注意しなければならないない点が……
と解説していると、遠くの廊下から何やら男女の言い争う声が聞こえてきた
「ちょ…リクオ様、何ですかいきなり?」
「ああ、会議前にちょっと口吸いをな、気合入れさせてくれ」
「は?何言ってるんですか、もう皆さんお揃いですよ!早く行って下さい!!」
「いいじゃねぇか少しくらい・・・コラ逃げんな!」
「や、やめて下さい。誰かに見られたら……」
「大丈夫だって、ほら大人しくしろ」
「い、嫌です!もう〜〜〜〜〜」
「つらら」
「いい加減にしなさ〜〜〜い!!」
バチーン
「いっ痛ぇ」
きつけの一発と称して会議直前に、妻を廊下の壁に追いやりキスをせがむへたれな夫に、妻の激励の一撃が炸裂する音が聞こえて来た
おや、とうとうこうなってしまいましたか……いやいや何事にもほどほどが一番ですね
皆様も奥様への愛情表現にはご注意を!
了
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