「リクオ様、リクオ様」
真っ暗な闇の中、己の名をを呼ぶ声が聞こえてきた
ぱちっと目を開け思わず飛び起きると、そこは見慣れた部屋の中だった
「大丈夫ですか?リクオ様」
直ぐ横から懐かしい高い声が聞こえてきてリクオは、はっとした
その聞き慣れた声に、思わずリクオは隣にいた人物をぐわしっと思い切り捕まえたのだった
「きゃっ」
聞こえてくる小さな悲鳴に心が安堵するのを感じる
そして、恐る恐るその人物を見ると――
そこにはいつものつららが居た
金の瞳を大きく見開き、瞳の中の螺旋をさらにぐるぐると回しながら目の前のつららは驚いた表情でリクオを見ていた
「ど、どどどどうされたんですか、リクオ様?」
そのいつもの姿にリクオは盛大な溜息を吐き出す
「はぁ〜〜〜本物のつららだぁぁ〜〜」
「リ、リクオ様?」
リクオの心底安堵した呟きに、腕を掴まれたままのつららはおろおろしながらリクオを見上げた
良かったいつものつららだ
リクオはもう一度深い安堵の溜息を吐くと、目の前で驚くつららを見上げた
つららだ
いつもの彼女だ
あの世界での男であった氷麗を思い出しながら、目の前の少女に安堵する
はぁ、あのまま男の氷麗だったら僕は……
リクオはそこまで考えて、はた、と止まった
え、男の氷麗だったら……?
僕はどうしていた?
僕は
僕は
残念だ
!!!
そこまで気づいてリクオの顔が真っ赤になった
え?ええええええええええ?
ぼ、僕、僕って
もしかして……
隣の不安そうな顔をちらりと盗み見る
途端、顔から火が吹いてしまうのではないかと思える位恥ずかしくなった
動悸が激しい
心臓がバクバク言ってる
呼吸困難に陥りリクオが苦しそうにしていると
「り、リクオ様どうしました?どこかお加減でも悪いのですか?」
と、慌てて主の顔色を窺うつららにリクオが絶叫した
「ご、ごめんつらら、当分僕に近寄らないで!」
「えええええええ!ど、どうしてですかリクオ様ぁぁ〜〜」
リクオの絶叫に、ショックを受け半泣きになるつらら
「何故ですか?」と理由を聞こうと縋ってくる彼女に、リクオは内心で何度も頭を下げるのだった
と……当分無理!恥ずかしくて顔なんか見れないよ〜〜〜
恋は突然やってくる
了
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