いやあぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!



チュン チュン チュン

はぁ、はぁ、と真っ青な顔で飛び起きるとそこは自分の部屋だった

ぴったりと閉められた襖の向こうからは朝の訪れを知らせる小鳥達の囀りが聞こえてきていた

真っ暗なその部屋でつららの荒い呼吸の音だけが響く

「ゆ、夢?」

つららは肌蹴ていた襦袢の合わせを抑えながらほぉ、と安堵の溜息を吐いた



なんて夢……



夢だったと判った瞬間、どっと疲れが押し寄せてきた

夢の中で何度ももがいたのであろう

着ていた襦袢は肌蹴け、帯は緩み髪の毛はボサボサ

とんでもなく、あられもない姿をしていた

ドキドキと鳴る心臓を押えながら我ながら酷い夢だったと溜息を吐く



まさか、まさか二人のリクオ様にあんな事を……



そこまで思い出してボッと顔が真っ赤になった

ぷしゅ〜と音を上げて湯気まで昇っている

興奮の冷めない火照った体をぱたぱたと己の手で仰ぎながらつららはのろのろと布団から這い出してきた



り、リクオ様にどんな顔して会えばいいの〜〜?



更に赤くなった頬をぶんぶんと振りながらつららは胸中で絶叫する

酷い脱力感に重い体を引き摺りながらなんとかタンスの前に着いた時



「つらら居る?」



この時間には珍しい主の声が聞こえて来た

「は、ははははい!!」

先ほどの夢の事もあってか、つららは聞こえて来た声に極端に反応する

飛び上がりながら返事をしてしまった自分に羞恥で真っ赤になりながらつららは恐る恐る部屋の襖を開けた

そろりと開けた襖の隙間から春の日差しのようなリクオの笑顔が飛び込んで来た

つららはその眩しい笑顔に内心「うっ」と呻きながら後ろめたい気持ちを隠して主へ挨拶をする

「お、おはようございますリクオ様」

「おはよう、入ってもいい?」

にこにこと屈託無く笑う主につららは一瞬どきりとした

先ほどの夢が脳裏に蘇ってくる

「す、すすすすみません、今起きたばかりですからその……」

顔を真っ赤にさせてごにょごにょと言い淀むつららにリクオは

「ああ、なら丁度いい」

と更に笑顔を深くして頷いてきた

「へ?」

驚いたのはもちろんで

つららは主の言葉に間抜けな声を上げて見上げた

そしてつららは驚愕する



にこにこと笑う主の後ろには



にやにやと不適な笑みを張り付かせた夜のリクオの姿が……



「あ、あの……」

口をパクパクしながら昼の姿のリクオの背後を指差すつららに

昼リクオは「ああ」と暢気に背後を振り返り

そして――



「修行していたらこうなったんだ」



嬉しそうにニコニコとつららの顔を見ながら言ってきたのだった



それは夢か幻か?



それとも……



ひえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ



奴良家の朝につららの悲鳴が響き渡っていった






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