部屋の中へ入ると中は真っ暗だった
「つらら」
もう寝てしまっているのか?と愛しい女の名を呼ぶ
すると――
「リクオ様、お待ちしておりました」
真っ暗な部屋の中から凛とした声が聞こえてきた
その声の主は部屋の真ん中、布団の敷かれたその上に正座をし深々と頭を下げていた
それはリクオが求めて止まない愛しい側近――
つららだった
やっとやっと辿り着いた
リクオはここまでの長い道のりを思い出し、感極まって口元に手を当て目の前の女を見つめた
「つらら、俺・・・・」
リクオがゆっくりと手を伸ばし、つららを抱きしめようとした刹那
ヒュン
リクオの頬を何かが掠め飛んでいった
ぴきーーーーん
そのすぐ後、背後の襖が凍りつく
つららに手を伸ばした姿勢のまま固まるリクオ
「お部屋にお戻りください、これ以上は手加減しません!」
固まるリクオに向かって凛とした冷たい視線でつららが言い放つ
「え?いや、つららさん・・・」
リクオは何が何やら・・・・
リクオは困惑の表情のまま、つららに近づこうとした
が
ひゅん ひゅん
それを遮るように氷の礫がリクオに向かって飛んでくる
「ちょっ、おま・・・それはないだろう?」
リクオは焦った
ただ愛しい女性に逢いに来ただけなのである
なのにこの仕打ち
何がどうして?と混乱する頭でなんとかつららの元へと近づこうとするリクオ
そうはさせんと、反撃するつらら
「いい加減になさいまし!毎度毎度、悪戯にもほどがあります!!」
つららは完全に勘違いしていた
その事に気づいたリクオはムッとする
「お前勘違いしてんじゃねえよ!」
「何を今更、ひとの安眠を妨害して楽しいですか?」
「いや、違うから!そうじゃなくて!!」
「何が違うのですか?首無から聞きましたよ、リクオ様はわたくしをからかって楽しんでいらっしゃるって、寝不足で護衛が勤まらなくなったらどうするんですか?」
あの野郎・・・・
つららの言葉にリクオの眉がぴくりと震えた
「違うって言ってんだろう!!」
つららが放った礫を避け、鏡花水月でつららの懐に飛び込むと、両腕をがしりと捕まえ拘束した
「いや、もう離してください!いい加減に・・・」
「つらら、そうじゃねえ。俺はお前に逢いに来てたんだ」
「へ?」
リクオの言葉につららはポカンと呆けた顔になると、捕まえられている腕のことも忘れ、まじまじと目の前の主を見上げた
「逢いに来てたって・・・」
「そのままの意味だ」
「へ?え・・・えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
艶っぽい声と切なげな瞳でそう言ってやれば、つららの頬はみるみる内に赤く染まっていき
ついには奇妙な声で悲鳴を上げていた
「逢いにって・・・え?え?」
尚も混乱するつららの腕を離し、優しく肩に手を置いてゆっくりと理解るように己の気持ちを伝えた
「つらら、俺はお前が欲しい。側近としてではなく一人の女としてだ。解るかこの意味?」
その言葉につららの顔は熟れたトマトのように真っ赤になり、頭からはぶしゅーと湯気まで噴き出し口をパクパクさせてリクオを見上げていた
「つらら、返事は?」
トドメとばかりにリクオはありったけの甘い声で囁き熱い視線を向けてやる
すると・・・・
ドカッ
「は・・・・い?」
両手で抱える程の大きな氷の塊がリクオの脳天に直撃していた
やったのはもちろん、つららだ
「お、おおおおおお戯れもいい加減になさいませ!」
つららは真っ赤な顔をしたまま、呂律の回らなくなりそうな舌で叫ぶ
衝撃で畳に突っ伏していたリクオはむくり、と起き上がると
「やってくれるじゃぁ〜ねぇか〜〜」
「つらら!」
かっと目を見開き叫んだ
「口でいってもわかんねぇならこうだ!」
リクオは怒りの形相のままつららの着物をがしりと持つと
ビリーーーーーーー
派手な音を立ててつららの着ていた着物を引き裂き脱がした
「きゃあぁぁぁぁぁぁ」
そのすぐ後、つららの悲鳴が深夜の浮世絵町に木霊した
数刻後――
「うっうっ・・・酷いですリクオ様」
「ぼ、僕にどうしろと・・・・」
朝日が眩しく差し込む部屋に
悲痛な声ですすり泣くつららと
顔を両手で覆い隠して座り込む昼の姿のリクオがいた
僕がやったんじゃなぁ〜い、悪いのは全部夜のせいだぁぁぁぁぁぁ!
はたして悪いのは昼と夜どっちだったのやら?
真相は謎に包まれたまま・・・・・
了
裏部屋に裏バージョンがあります。
※注意:リクオが酷いです真っ黒くろ助と化しております^^;
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