そんなこんなで三羽たちの協力の下、リクオはつららの行動を細かく把握し本命探索に勤しんでいるのだが、なかなかどうしてその本命とやらを探り当てることはできないでいた

まあ、当然といえば当然なのだが・・・・

よもやその本命本人がまさか自分を探しているとは露ほどにも思っていないだろう

そんなこんなで、とうとう会議も終わり後は宴会で無礼講という流れに変わる頃

上空で待機していた黒羽丸がそっとリクオの元へ降り立ってきた

「リクオ様」

「ん?どうした?」

つららに何か動きがあったのか?と黒羽丸に視線を寄越すと、何故か彼は言い辛そうに視線を彷徨わせた

「その・・・雪女がこちらに向かって来ております」

「へ?」

黒羽丸の言葉にリクオが慌てて顔を上げると

ぱたぱたと小走りでリクオの自室へ向かってくるつららが見えた

「うおっ、まずい黒羽丸隠れろ!」

「はっ!あ・・・リクオ様」

「なんだ?」

慌てて隠れようとするリクオに黒羽丸が声を掛けてきた

リクオ様はそのまま、自室でお待ちください」

「は?なんで?」

「お待ちください」

お願いしますと、黒羽丸に頭を下げられたリクオは訳も分らず自室に待機させられる形になってしまった



ぱたぱたぱたぱた

衣擦れの音と廊下を軽快に走る音が段々と近づいてくる

リクオは近づいてくるその音に、何故か緊張していた

この時になってリクオはなんとなく気づき始めていた



もしかして?



疑問が確信へと変わりそうになり、緩む頬を必死に引き締めていると

「リクオ様?」

おずおずと躊躇いがちに声が掛けられてきた

声の主は確認せずとも誰だか分っていたのだが、リクオは平静を装って問いかけた

「つららか?」

「はい、あの・・・少しお時間よろしいですか?」

控えめに訊ねてくるつららの声に、内心どきりとしながらリクオは静かに返した

「ああ、いいぜ」

リクオの返事を聞いたつららは、恐る恐るといった風に襖を開けてそっと中へと入ってきた

いつもよりもゆっくりと、おずおずと入ってくるその姿はいつもと違って見えて



恥ずかしそうに伏目がちに俯くその頬には薄っすらと桜色に染まり

いつもよりも頼りなげな歩みは儚さをさらに強調させ

月光に照らされたその姿はまるで狼に怯える小鹿のように可愛らしくリクオの瞳に映った



なんかいつもよりも・・・・



気を抜くと熱くなりそうな顔を必死で押さえ、リクオはつららの次の行動を待った

「あ、あの・・・リクオ様」

これ、そう言っておずおずと差し出された包みにリクオはゆっくりと視線を寄越した

それは



先程の男達が受け取っていたそれとは比べ物にならないくらい



豪華に包装されていた



金と銀の包装紙やリボンなどを設えたそれは、見るからに手の込んだ包装をされていた

どこからどう見ても



本命用



リクオは内心で「勝った!」とガッツポーズをした

そして、優雅な手つきでそれを受け取ると

「開けてもいいか?」

と優しい眼差しで訊ねれば

つららは真っ赤な顔をしたままこくんと頷いた

ふっと口元に笑みを作ったままリクオはその包装を丁寧に解いていく

シュルシュルと音を立てて外されたリボンが床に落ち暫くして、その全貌がリクオの目の前に晒された

そこには



I LOVE YOU リクオ様



と大きな力強い字で書かれていた

その文字を思う存分堪能したリクオはふっと顔を上げると

「ありがとうな」

そう言って艶っぽく笑みを作った

「は、はい・・・その貰って頂けて嬉しいです」

リクオの言葉を聞いたつららは嬉しさでぽろぽろと涙を零す

それをそっと袖で拭ってやりながらリクオはそっとつららの頭を己の胸の中へと引き寄せた

「今年は最高のバレンタインだ」

そう言って、リクオは静かに嬉しさを噛み締めた






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