「申し訳ありません」
つららは畳みに頭を擦りつけんばかりの勢いでリクオに謝っていた
あの後、なんとか元に戻ったつららは取り合えず体に異常が無いか鴆に診てもらった後、首無から今までの経緯を説明してもらった
秘薬のせいとはいえ、5日間もリクオを無視し続けたという事実につららは驚愕し、慌ててリクオの部屋を訪れ開口一番リクオの目の前で土下座をしたのである
リクオはというと
既に夜の姿に変わっており、腕を組み目を閉じたまま一向に動く気配が無かった
つららは己のしでかした事を悔やみ瞳に涙を溜めてリクオの姿をじっと見つめていた
どうしよう・・・リクオ様に嫌われてしまったら
つららは例え様もない不安に胸が押しつぶされそうになる
リクオに捨てられるかもしれないという恐怖に体が小刻みに震えだす
暫くしてリクオがようやく口を開いた
「つらら」
「はい」
リクオの声にすぐさま返事をする
そんなつららをリクオはじっと見つめていたが、徐につららの腕を掴むとぐいっと引き寄せた
つららは予期していなかった出来事に小さく悲鳴をあげると、ぽすんとリクオの懐に倒れこむ
その耳元へリクオの熱い吐息が触れ、思わずびくりと体を震わせた
「馬頭丸の方が良いんじゃなかったのか?」
リクオの言葉につららは体中の体温が冷えていくのを感じた
「いいえ、いいえそんな事はありません!」
つららは顔を上げると必死に首を振った
「へえ、その割には随分いちゃついていたじゃねえか?」
「そ、それは薬のせいで・・・」
つららはとうとう涙目になって俯いてしまった
「お慕いしているのは、リクオ様だけです」
「ほお、それなのに馬頭丸とはあんな事やこんな事してたわけだ?」
「そ、それは・・・」
記憶が無かったとはいえ、リクオにはっきりと言われてしまったつららは悲しそうに唇を噛む
俯くつららの耳元にリクオはそっと唇を寄せると
「俺の事を好きなのに他のやつの所に行ったお前には罰が必要だな」
言ってニヤリと笑う気配がした
驚いて顔を上げたつららの瞳には、それはそれは楽しげなリクオの顔が映っていた
「あ、あのリクオ様・・・」
嫌な予感を感じリクオから離れようとするつららをがっちりと拘束したリクオは、そのままつららを押し倒し腕を押さえつけてしまった
「お仕置きだな」
凶悪な程爽やかな笑顔を貼り付けながらリクオは嬉しそうに囁いた
秘薬の一件から数時間後
しだれ桜の枝の上で馬頭丸は久々の自由に喜んでいた
「はあ〜やっと自由になった〜」
馬頭丸は伸びをすると枝の上にだらりとうつ伏せになる
「おい」
そこへ突然リクオの声が聞こえてきた
馬頭丸は慌てて飛び起き、枝の間から顔だけを出した
「な、なに?」
今回の事でリクオに後ろめたさを感じている馬頭丸は内心ビクビクしながら返事をする
「今回はうちのつららが世話になったな」
「い、いいいいいや、世話だなんて、ぼ、ぼく何も無かったし」
リクオの言葉に馬頭丸は高速で首を振ると慌てて言い返した
「ふ、そうかい?それにしちゃあいやに楽しそうだったみてぇだが?」
「な、楽しそうだったなんて、ないないない!全然楽しくないよ〜」
言いがかりだ!と馬頭丸は真っ青になって否定した
「まあいい、俺のつららに手を出さなかったのは褒めてやるよ」
リクオの言葉にほっと胸を撫で下ろす
「でもな」
リクオがそういった瞬間、ビンッと何かが張り詰めたような音が聞こえてきた
次の瞬間馬頭丸の世界が反転する
否、馬頭丸が反転したのだ
先程まで馬頭丸が居たしだれ桜の枝には一本のロープが巻き付いていた
そのロープの先には馬頭丸の足がくくり付けられている
そう、馬頭丸はリクオによってあろうことか宙吊りにさせられてしまったのだ
「わ〜降ろしてよ〜」
バタバタと手を振りながら下に居るリクオに懇願する
「5日間も俺の目の前でいちゃついてくれたバツだ、朝までそのままでいろよ」
リクオはふっと意地悪く笑むと、さっさと部屋へと帰ってしまった
一方宙吊りにされたままの馬頭丸はと言うと
「牛頭〜牛頭〜助けてよ〜」
一緒に居たはずの牛頭丸に助けを求めたのだが
「自業自得だ、暫くそのままでいろ」
と冷たくそっぽを向かれてしまっていたそうな
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてなんとやら
了
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