その時は確か『満月の下で口付けを交わしたカップルは永遠に結ばれる』て、教えてもらったような気がするんだけど?



そのときの事を思い出す

上気した頬と上目遣いで可愛らしく話す幼馴染に、相槌を打ちながらリクオは「ここに連れて来てやったらアイツはどんな顔をするだろう」と考えていたことを思い出した

ちらり、と目の前に居るその『アイツ』の顔を盗み見る

目の前のつららは恥ずかしそうに俯きながら頬を真っ赤にしてリクオの様子を伺っていた





な〜んだ





リクオは突然噴出した

「ぷっぷくくくく」

「え?え?リクオ様?」

突然声を押し殺して笑い出したリクオに、つららは目を丸くしながらまじまじとリクオを見つめる

「ああ、ごめんごめん可笑しくって」

「え・・・そ、そんな・・・」

リクオの言葉に、つららは「ふぇ」と声を出して泣き出しそうになってしまった

そんなつららの様子にぎょっとしたリクオは、慌ててつららに弁解する

「ち、違う違う!つららの事で笑ったんじゃないよ!」

「へ?」

瞳に涙をいっぱい溜めて見上げてくるつららに、リクオは一瞬で目を奪われる

早く誤解を解かなくちゃ、と頭では分かっているのだが

だが・・・目の前で可愛い泣き顔を見せる側近からどうして視線を逸らせよう?





く・・・可愛い・・・





昔から一番のお気に入りで、苛め甲斐があって、それでもって泣き顔が可愛すぎるこの側近に、リクオは改めて自分はこの側近が大好きなんだと実感する

『好きな子ほど苛めてしまう』

を地でいくぬらりひょんの孫は、この涙に弱い





この涙を流せられるのは自分だけ

この泣き顔を見られるのは自分だけ





いつも気丈に振る舞い、他の側近達には決して見せない姿でも、リクオの前では容易く曝け出す

これは僕だけの特権





僕だけのもの





いつしかリクオはそう思うようになっていた

そして、今もこの愛しい側近はリクオの言動で簡単に心を見せてくれる

そんな姿にリクオは嬉しさでまた笑った

「うう・・・リクオ様ぁ」

つららはリクオがまた笑ったことに、本当に呆れられてしまったんだと勘違いしてまたふにゃりと顔を歪めて泣き出した

「あ、ご、ごめんつらら、そういう意味じゃなくて!」

リクオは慌ててつららを抱きしめてやると、顎に手を添えそっと上を向かせた

すぐ近くに大好きな泣き顔を見てリクオは一瞬言葉に詰まる

体の奥に生まれた衝動をぐっと押さえ、努めて優しく語りかけた

「変だなんて思っていないし、軽蔑なんてしてない、まして呆れてなんていないよ、つららにそんな風に思ってもらえてたなんて凄く嬉しい」

「ほ、本当ですか?」

「うん、だから僕の側に一生居てくれる?」

「は、はい!もちろんです!喜んでお側に居させていただきます!!」

リクオの言葉を聞いた途端泣き顔が一変、嬉しそうに頬を染めてつららがリクオを見上げた

鳴いたカラスがなんとやらである

そんなつららにリクオは苦笑を漏らすと、視線を向ける

「ねえ、つらら」

「はい?」

「そんなに僕と一緒にいたい?」

「はい!もちろんです!!」

リクオの質問につららは間髪入れずに頷き返す

その一途な想いに、リクオは心の中がほんわりと温かくなるのを感じながらつららに微笑み返した

「そっか、じゃあずっと隣に居てね」

「え?は、はい!」

想いを乗せてリクオが言葉を紡ぐと、つららは嬉しそうにこくりと首を縦に振って応えた





主従以上の想いと

側近としての想い





二人の間にはまだまだ長い距離があった

その距離がぴったりとくっつくまで後もう少し時間がかかりそうだ



それまでは僕だけの側近でいてね、という願いを込めてリクオはゆっくりと顔を近づけていった

「へ、リクオ様?」

驚く側近の声は次の瞬間塞がれてしまった



ちゅっ



軽いリップ音が小さく響く中、満天の星空とまん丸に輝く月に見守られながら、二人の影は重なり暫くの間そのままでいた



おまけ→


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