「怪我は無いか?」

「はい」

薄暗い体育館の裏

全てが終わりほっと胸を撫で下ろしたリクオは振り返り様、ぎょっとした

リクオの視線の先――

引き裂かれたブラウスの合わせを押さえながら、つららがリクオに元気に頷いていた

心なしかその頬は薄っすらと染まっていて

しかもブラウスの裂け目から、ちらちらと見える下着にリクオは思わず視線を逸らした

「う・・ゴホッ、こ、これでも着てろ」

リクオはそう言うと肩にかけていた羽織をつららの肩へとかけてやった

「ありがとうございます」

つららはリクオに礼を言うと、頬を染めながら羽織で胸元を隠す

「たく、こんな姿他の奴に見られたら・・・」

「何かおっしゃいました?」

「いや何でもねえ」

キョトンと見上げてきたつららにリクオは慌てて頭を振った



たく・・・こんな姿誰にも見せられね〜よ



頬を染めながら、こんな所に誰かが来たら不味い、とリクオは早々に引き上げようと踵を帰した

「帰るぞ」

「は、はい」

いつもよりも足早に歩く主の後を薄い羽織をしっかりと握り締め、とてとてと必死について行くつらら

そんな健気な姿をちらりと見たリクオはぴたりと歩みを止めた

「リクオ様?」

突然立ち止まった主につららは不思議そうに首を傾げる

暫く考え込んでいたリクオはつららへ向き直ると



がばっ



と、徐につららを横抱きに抱き上げた

「きゃあっ!」

「やっぱり歩いて帰るのはまずいな」

リクオはそう呟くと、ふわりと飛び上がり軽い身のこなしで電柱や屋根を伝って空へと舞い上がる



「へ?え?り、リクオ様〜〜??」



既に暗くなった夜の街の上空で、リクオに抱きかかえられたつららの混乱した声が響いていた



つららがリクオのこの行動の意味を知るのはもう少し後の話







裏に続く→


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