それを聞いたりクオは「ほんと?」と含みのある笑みを見せる

その笑顔に引っかかるものを覚えながら、つららは「ええ」と素直に頷いてしまった

その途端――



「じゃあ、『僕とつららの子供』が来るよね」



とにこにこと満面の笑顔でリクオが言ってきた



爆弾投下



つららはその言葉に暫くの間固まっていた

その間もリクオは畳み掛けるようにつららに言ってくる

「昔、つらら言ってたじゃない『いい子にしてたら僕達の子供』をコウノトリが届けてくれるって!」

したり顔のリクオの言葉につららは弾かれるように顔を上げた

「え?ええっ!?」

リクオの言葉に昔の記憶を思い出し、羞恥に頬を染めるつららは本当に――



可愛かった



その様子を見ながら、くすくすと肩を震わせて笑いを堪えるリクオの姿があった

「あ、あれは・・・」

「あ〜早く来ないかなぁ〜、僕達の子供」

つららを横目で見ながら嬉しそうに言うリクオにつららは絶句した



り、リクオ様〜〜〜!



完全にからかわれているとようやく判ったものの、しかしつららは何も言えなかった

子供に言った苦し紛れの嘘とはいえ、言ったのは自分だ

「いつ来るんだろうね?」

とうそぶくリクオにつららは

「知りません」

と真っ赤になった頬を膨らませてそっぽを向くしかなかった







そしてその夜――

「おう、つらら」

「あ、若」

夜の姿になったリクオがふらふらと庭を散歩していると、夕食の片付けの途中なのかつららが膳を持って廊下を歩いている姿を見つけたので、リクオはにやりと笑いながらつららを呼び止めた

「どうなされました?」

つららは振り返り声の主の方へと嬉しそうに近づいてくる

そんなつららに艶やかな笑みを向けながら、リクオは「そう言えば」と思い出したように言ってきた

「さっきは悪かったな」

「何がですか?」

「ほら、コウノトリの事だよ」

「ああ、あれですか・・・」

リクオの言葉につららは先ほどのやり取りを思い出し、頬を染めると恥ずかしそうに視線をそらした

「ああ、俺も大人気ないことをした、すまなかったな」

そんなリクオの言葉に驚いたつららは、はじけるように主の顔を見上げた

「そ、そんな・・・私の方こそ幼かった頃とはいえ、リクオ様にあんな嘘を・・・申し訳ありません」

と言って、深々と頭を下げた

「いや、あんな嘘ちょっと考えればわかるだろ?それに・・・・」

言いながらリクオはつららに近づくとそっと頬に手を添えた



もう知ってるしな



と、にやりと意味あり気に笑うとつららの肩を抱き寄せた

「わ、若?」

途端、つららは頬を染め至近距離に近づいてきたリクオを見上げると、わたわたと慌てはじめた

そんなつららをひょいっと軽々と横抱きにしたリクオは、驚いて自分を見上げる愛しい恋人の耳元でそっと囁やく



コウノトリなんかよりも、もっと確実な方法があるからな



と・・・・

その言葉に固まるつららに妖艶な笑みを向けると、リクオはつららを抱えたまま自室へと続く廊下へと消えていった



その後、リクオの部屋からたまぎる悲鳴が聞こえて来たのは言うまでもなく

しかも、悲鳴を聞きつけ慌ててリクオの部屋へと駆けつけた側近たちが見たものは・・・・



布団の上で何かに跨ったような姿勢のまま、氷付けになったリクオの姿があったとか



リクオ15歳、また『男』になれなかった春であった






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