ふとある場所でつららの視線が止まる

熱心に見るつららの側に寄り、リクオはつららの視線の先のものを確認すると

「何かいいものあった?」

「え、いいえ何も」

つららは慌てて視線を離すとふるふると顔を横に振って否定した

リクオはふ〜んと先程つららが見ていたアクセサリーをチラリと見ると徐に話題を変えた

「例のものを」

店員に声をかけると、それまで二人のやり取りを静かに見守っていた女性が軽く会釈し店の奥へと引っ込んでしまった

暫くして店員の女は幾つものリングが連なったものを持ってきた

「失礼します」

店員はつららに一礼すると、左手を取ってその薬指にリングを合わせていく

つららは、されるがままになりながら首を傾げていた

「こちらのサイズでよろしいかと思います」

店員はそう言いながら先程つららの指に合わせていたリングの一つを取るとリクオに見せた

「わかった、それでお願いするよ」

「かしこまりました」

店員は一礼するとまた店の奥へと消えていく

「あ、あのリクオ様?」

つららは意味が分からないとリクオに説明を求めた

「用事はもう済んだよ、さどこかで休んでから帰ろうか?」

しかしリクオはそう言うと店員と二言三言言葉を交わした後、店のロゴ入りの小さな袋を受け取って店を出てしまった

その後はリクオと一緒に軽い食事をし家へと帰ったのだが

つららは今日のリクオの行動に始終はてなマークを頭の上で飛ばしていた

「何だったのかしら?」

家路に着く道のりの途中つららはぽつりと呟く

あれよあれよと言う間にあの宝石店を出てしまったつららとしては、もうちょっと見たかったという欲求が残るばかりであった

リクオの疑問も未消化のままあと少しで家に着くというところでリクオが突然声をかけてきた

「つらら、はいこれ」

そう言いながらつららの目の前に差し出されたのは、先程宝石店でリクオが受け取っていたロゴ入りの袋だった

つららは突然の事に目を見開いたまま両手でその袋を受け取る

「あ、あのよろしいのですか?」

こんな高価な物を、そう言いながらつららは受け取っても良いのかとリクオに聞き返した

「うん、つららに貰って欲しくて買ったんだ」



気に入ってもらえると嬉しいんだけど



そう言って照れ笑いするリクオにつららは嬉しさで胸がいっぱいになった

「はい、リクオ様に頂いたものはなんでも嬉しいです!家宝にします」

そう言って小さな袋を胸元でぎゅっと抱きしめるつららに、リクオは大げさだなぁと苦笑した

「開けてみてよ」

「はい」

つららは嬉しそうに袋の中のものを取り出した

「これ・・・」

手にしたものをまじまじと見つめながらつららが驚いたように呟く

細長いケースの中から出てきたのは、あの店でつららが見ていたペンダントだった

細いシルバーチェーンに雪の結晶を模ったモチーフがついた可愛らしいペンダントである

雪の結晶の部分には小さなダイヤがついており、いったいいくらしたのかと恐る恐るリクオを見上げた

その視線にリクオは苦笑を零すと「そんなに高いものじゃないよ」と優しく言った

それを聞いたつららはほっと胸を撫で下ろす

「あとこれも」

リクオはそう言ってもう一つ小さな四角い箱を手渡した

「え?」

てっきりペンダントだけだと思っていたつららは思わぬおまけに目が点になる

「つららに似合うと思ってさ」

そう言って箱から取り出したそれをつららの目の前にかざした

「きれい」

つららはその美しい装飾に目を奪われ溜息も露に呟いた

リクオの指に摘まれたそれは小さなダイヤの散りばめられた指輪だった


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