「ちょっと、アンタ聞き捨てならないね!雪女がなんでリクオ様を誑かすのよ!」

「おうおう、そうだ雪女はなぁ昔っからリクオ様一筋だったんだぞ!」

「一ツ目入道様、その言葉聞き捨てなりませんね」

「貸元だかなんだか知らないが、雪女を馬鹿にする奴は拙僧が許さん!」

「ん〜、おいら良くわかんないけどアンタが悪いよたぶん」

「そうだそうだ〜」

「雪女にあやまれ〜」



やんややんや



リクオの側近はもちろん納豆小僧や3の口までもが口々に捲くし立てる

そのどれもが雪女を庇う科白だった

「みんな・・・・」

つららは仲間達の言葉に嬉しさで瞳を潤ませる

「う・・・」

突然押しかけてきた本家の妖怪たちに、さすがの一ツ目入道もこれでは敵わんとたじろいでいると

そこへ、リクオがしたり顔で近づいてきた

「そういうこった一ツ目、示しも何も本家のみんなが認めてるんだ問題ねえだろう?」

「ついでに付け加えさせていただきますと・・・・」

リクオの言葉に付け足すように突然背後から声が聞こえてきた

一ツ目入道はぎょっと驚いて振り向くと

いつの間に現れたのか、そこには三羽鴉が立っていた

「一ツ目入道様を除いた全ての貸元たちは、今回の婚約に同意されておられます」

長兄黒羽丸が淡々と告げた言葉に更に驚き辺りを見回すと、本家の連中に睨まれて小さくなっている貸元たちの姿があった

その様子を静かに見守っていたリクオは

「そう言うこった」

と、にやりと口角を上げて目の前の男を見下ろした

この状況下で見下ろされた一ツ目入道も、いい加減観念せざる負えないわけで・・・・

がくっと肩を落とすと「好きにしろい!」と自棄気味に叫んだ

「ふっ、そうかい・・・じゃあ」

リクオはそう言って毛倡妓たち、側に控えていた女衆に目配せする

すると

「承知しました〜♪」

と、待ってましたとばかりに女衆達が嬉しそうに返事をしてバラバラと散っていく

そして――



すらり



奥の座敷の襖があっという間に取り払われた



そこには、白木の台に乗せられた豪華な結納品の数々が並んでいた



そしてその更に奥には贅を尽くした膳が所狭しと何十にも並べられており

飲みきれないほどの巨大な酒樽も壁側にうず高く積まれていた

その光景に貸元たちはもちろん、本家の連中も目を瞠る

「ささやかだが、結納も済ませちまおうと思ってな、今日は無礼講だたくさん飲んで食ってってくれ」

リクオの大盤振舞いに皆一斉に歓声を上げた



「いいぞ奴良組総大将!」

「いよ!三代目!!」



こうして奴良家の夜は更けていった






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