「一ツ目、お前は気にいらねえのかい?」
「おうおう気にいらねえな〜、大体俺達に招集をかけたのはそこにいるぬらりひょん様だぜ?緊急って言うから来てやったのに、来てみりゃあなんだ?三代目様の結婚話、はっ、しかも相手が側近だあ?側女が正妻になれるかってんだ、示しがつかねえだろうが奴良組潰す気かよ?」
ふざけるな!一ツ目入道が声高に叫んだその瞬間、リクオの片眉はぴくりと跳ね上がり、鋭い目つきで一ツ目入道を睨んだ
ぞくり
背筋に走る悪寒
一瞬で部屋を満たすリクオの畏
「ふざけてんのはお前だよ」
一ツ目ぇ、とリクオが口角を上げながらギラリと見据える
「俺の女を側女と呼ぶか?」
「ふ、ふん本当のことだろう」
何が悪い、と言いかけた一ツ目は次の瞬間「ひいっ」と悲鳴を上げた
腰を抜かして畳に尻餅をついた一ツ目が見上げる先――
すらり、と鈍く銀色に光る弥々切丸の刀身を鞘から抜き、その切っ先を向けるリクオがいた
「一ツ目、言い残すことはそれだけか?」
「ま、待て早まるな!」
「リクオ様」
一ツ目入道に今まさに弥々切丸を振り下ろさんとしていたリクオを止めたのは他でもない
つららだった
一ツ目入道を庇う様にリクオの目の前に立ち塞がり、「おやめください」と必死に乞う
「つらら、そこをどけ!こいつ我慢ならねえ」
「いいえ退きません」
「お前酷いこと言われてんだぞ?」
「はい、分かっております、ですがここは刀をお収めください」
尚も両手を広げて一ツ目入道を庇おうとするつららにとうとうリクオも折れた
しぶしぶといった表情で弥々切丸を鞘に収める
それを見届けたつららは即座に一ツ目入道に向き直り頭を下げた
「申し訳ございません、私が不甲斐ないばかりに」
全ては私の責任でございます、と平身低頭するつららに一ツ目入道は懲りずにまた口を開いた
「ふんその通りだな、お前が三代目を誑かさなきゃ俺もこんな目に遭わなかったんだ」
その瞬間
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ
と部屋の向こうから怒りの負の念が押し寄せてきた
しかも一人や二人のものではない
スパーーーーーーン
と、突然襖が勢い良く開いたかと思ったら、そこから本家の妖怪達がわんさと中へと雪崩れ込んできた
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