「暇じゃのう・・・」
雪女の長は一人広い屋敷の中でつまらなさそうに呟いていた
ふと、愛しい孫の顔が脳裏を過ぎる
「今頃どうしているのかのう・・・ふむ」
女は何事かを思いつくと、細くしなやかな指先で円を描くと何も無い空間に氷の鏡が出現した
氷面鏡
女が得意とする妖術の一つだ
これは遠く離れた映像を映し出してくれる
女が鏡の前に手をかざすと目的の映像が映し出された
暫くその様子を見ていた女だったが、突然食い入るように鏡を凝視しだした
「ほお・・・」
女は興味津々な顔つきになると、徐にすくっと立ち上がり鏡に向かってにやりと笑んだ
「面白そうじゃな」
その顔は悪戯を思いついた童子のような顔をしていた
「リクオ様〜学校に行く時間ですよ〜」
清々しい晴れやかな朝
側近であるつららの声が長い廊下に響いてきた
「あ、もうそんな時間?じゃあ行こうか」
リクオは手早く身支度を済ませ、玄関で待っているつららと青田坊と共に学校へ向かった
学校へ到着すると、何やら3年生の教室が騒然としていた
聞く所によると、どうやら転校生が来るらしい
新しい学び舎の新顔に生徒達は浮き足立っていた
「男の子かな?」
「可愛い娘がいいな〜」
などと誰が来るのか話はそれで持ちきりだった
そんな話を聞いたリクオ達は――
「転校生は3年生だそうですね」
「うん、僕達には関係ないね」
「ささ、若ホームルームが始まってしまいますぞ、急ぎましょう」
学年の違う転校生の事は別段それ以上興味も沸かなかったので、リクオは側近に促されるまま教室へと急ぐことにした
暫くして、朝のホームルームが始まった3年生の教室では、艶やかな微笑と共に自己紹介をする転校生の姿があった
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