「あ・・・・・」

顔を覆う主人の隣に見慣れぬ少女を見つけ小妖怪たちは思わず後退る



不味い・・・見られた!!



気づいた時には既に遅く、見慣れぬ少女は驚いた顔をしながらこっちを見ていた

「あ、その・・・これは・・・・」

鯉半は何とか誤魔化そうと若菜の方へと振り返る

しかし、それよりも早く若菜が先に口を開いた

「あら、妖精さん?こんな所で珍しいわねぇ」

若菜は嬉しそうに小妖怪たちに話しかけてきた



はい?妖精さん??



鯉伴と小妖怪たちは目の前の少女が発した言葉に固まった

見れば少女は嬉しそうに、にこにこと笑顔を作っている

しかも、鯉半の足元で隠れている小妖怪たちの側まで来ると、目の前でしゃがみ込んだ

「こんにちは、あなた達何処から来たの?」

若菜は奇妙な姿の小妖怪たちに臆する風でもなく、気さくに話しかけている

あその珍しい光景に鯉半は言葉も忘れて少女をまじまじと見つめていた

そんな鯉半を他所に若菜は更に小妖怪たちに話しかけてくる

「迷子?一緒にお家を探してあげましょうか?」

「あ、いや・・・その・・・・」

にこにこと笑ってくる若菜に、小妖怪たちはどう返事をしたら良いのかと顔を見合わせ、そして主である鯉半へと視線を向けた

「あ〜、その・・・若菜ちゃんはこいつら見ても平気なの?」

鯉半は一瞬視線をぐるりと彷徨わせると、足元に隠れる小妖怪たちを指差しながら若菜に聞いてきた

対する若菜は鯉半の言葉にキョトンとした顔を向ける

そして、次の瞬間



「あ、あの・・・これは・・・その・・・・・」



今度は若菜が慌てだした

わたわたと手を振りながら冷や汗を流し始める

「こ、これはですね・・・その何と言うか見えちゃったというかその・・・・」

若菜の意味不明な言葉に鯉半は首をかしげた

その様子に若菜は勘違いしたらしく、いきなりしゅんと項垂れるとぽつりと言ってきた

「あの・・・気持ち悪いですよね?」

「は?」

鯉半は若菜の言葉の意味がわからなかった



鯉伴がきょとんと若菜を見下ろしていると、若菜は恥ずかしそうにこう答えてきた

「そ、その・・・妖精が見えるなんて」

その言葉にようやく合点がいった

「ああ、そういう事か」

「え?」

鯉伴が思わず呟いた言葉に若菜は不思議そうに顔を上げる

つまりは――



こういうものが平気なのだ、この娘は



鯉半はくすりと口元に笑みを浮かばせると少女を見下ろす

「いいや、俺も同じなんでね」

その言葉に少女は嬉しそうに笑っていた



今日珍しい娘に会った

出会いは二度目

二度あることは三度あるっていうよな

なあ、あんた

三度目もあると思うかい?



鯉半は薄暗くなりかけた空を見上げながら、この不思議で優しい少女の事がもっと知りたいと思い始めていた




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