リクオは、まじまじと目の前のつららを見下ろす
爆弾発言をしたつららはと言うと、きょとんとした顔でリクオを見上げていた
おいおいおいおいおいっ!誰だ!んな事教えた奴は!!
リクオは心の中で絶叫し頭を抱えてしまった
”姫始め”確かに姫と名はつくが、本当の意味は姫の格好をするわけでも、酌をするわけでも、殿方に奉仕するわけでも・・・それはするが・・・・いやいや!そんな意味合いの言葉なんかじゃねえっ!
とリクオは胸中で吠えた
唖然、と顔全体で表現しているリクオの姿に、何か変な事を言ってしまったのではないかと、つららはだんだん不安になっていく
「あ、あの・・・私何か変なこと言いました?」
何も言ってこないリクオに、痺れを切らせたつららが恐る恐るといった風に聞いてきた
そんなつららをリクオは無言のまま、まじまじと見つめ返す
何て言えばいいんだ・・・くそっ!
言えるかよ、と胸中で悪態を吐きながらリクオはつららから視線を外すと、躊躇いがちに口を開いた
「そんなもん聞いたこともさせた事もない」
「え?え?そ、そんな・・・」
つららはリクオの言葉に、見るからにがっかりと言わんばかりに肩を落として項垂れた
「そんな、そんな・・・頑張って着替えたのに・・・・」
ううう、と咽び泣くつららの姿に居た堪れなくなったリクオは申し訳なさそうに呟いた
「い、いやその・・・嫌なわけじゃないぜ?むしろ嬉しいっつーか・・・その・・・」
「本当ですか?」
ぐっ・・・・
リクオの言葉に、つららは不安げに上目遣いで見つめてきたのだが、その視線はリクオのハートに大ダメージを与えた
く、くそっ・・・可愛いじゃねえか!
ぎりっと、ダメージを受けた胸元を鷲掴みながらリクオはつららを見下ろした
「あ、ああ、本当だ」
「良かった」
ほっと胸を撫で下ろし、目尻に溜まった涙を拭うつららのその仕草にリクオは悶絶した
「リクオ様、大丈夫ですか?」
「あ?」
「そ、その・・・先ほどから胸の辺りを押さえていますので」
まさかお前の仕草にやられたとは言えず、リクオは「あー」とか「うー」とか言いながら視線を泳がせた
「どこかお怪我をなさっているのでは?」
つららはまさか自分の姿にリクオが欲情しかけているとは露ほどにも思っておらず、何の警戒心も無くリクオの胸を掴んでいる手にそっと自分の手を添えて、心配げに見つめてきた
くっ・・・ダメだ・・・
先ほどからリクオの脳内は、思春期の青年らしくあんな事やこんな事の妄想でいっぱいだった
昔、(祖父と一緒に)時代劇で見た町娘を誑かす悪代官のシーンがリクオの頭の中で繰り広げられている
俗に言う、「良いではないか」「お止めくださいあ〜れ〜」な世界である
そんな煩悩世界を繰り広げる危険な状態のリクオに、つららは更に身を詰めると心配そうに顔を覗きこんできた
「本当に大丈夫ですか?」
心配そうに覗き込むつららの甘い香りにリクオの理性は潔く切れた
あ〜も〜知らねえ・・・・
そう頭の中で呟くと、リクオは胸に添えられていたつららの腕をがしりと掴んだ
「え?え?リクオ様?」
突然のリクオの行動に、つららは目をまん丸にさせてリクオを見上げる
わかっていないのだこいつは、自分がどんなに危険な状態なのかということを
尚も不思議そうに見上げてくる側近に、リクオは何故か沸々と怒りの様なものが込み上げて来た
ついでにちらりと時計に視線をやると、既に時刻は次の日に変わっていた
今夜はじっくりと教えてやらねばならない
リクオはそう結論付けると目の前でポカンとしている側近に向かってにやりと口角を上げて言ってやった
「つらら、姫始めっていうのがどんなもんか、今夜じっくり教えてやるよ」
「へ?リクオ様?」
「嫌だって言っても却下だからな」
リクオはそう言うと、掴んでいた腕を引き己の腕の中に美しい姫を閉じ込める
「あ、あの・・・」
つららは突然の事に驚きもがく
そんなつららをリクオは腕に力を込めてぎゅっと抱き締めると、耳元へ熱い息を吹きかける
途端につららは耳まで真っ赤に染めて大人しくなってしまった
それを了承の意と取ったリクオは、つららの頬に手を添えゆっくりと上向かせた
化粧を施した大人びたつららの顔を心行くまで堪能したリクオは、その赤く色づく場所へゆっくりと顔を近づけていく
吐息がかかるほど近づいたリクオは「つらら」と囁くと、その真っ赤に染められた果実のような唇に優しく口付けた
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