全六話(5/6)



「つらら」

やっと見つけたそのヒトに
僕は笑顔を向けながらゆっくりと近づいていった

「リクオ様?」

彼女は僕がここに居ることに驚いているようだ
だってここは往来の真ん中
人で溢れ返る商店街のど真ん中で
買い物に勤しむ彼女を突然呼び止めたのだから
迷いもせずに彼女の元へ歩いて来る僕を見つけて
彼女は目を瞠っていた

そんなに驚くことかなぁ

僕は彼女の顔を見ながらくすりと笑う
僕にとっては彼女を見つける事なんて朝飯前
だって

彼女は目立つから

僕の目には眩しいくらい

他の人なんて霞んで見えてしまうくらい

彼女の存在は大きいから

彼女の纏う色は強烈だから

だからすぐ見つけられる

「どうして此処に?」
驚いた顔で僕の顔を見る彼女に
僕は
「迎えに来たよ」
と言ってやった
すると
彼女は目を見開いて
「え?」
と声を出した
「つららが居なかったから」
だから探しに来たんだと
そう言ってやれば
さらにその瞳は見開かれ
みるみる内に頬を桜色に染めた
そんな姿さえも
今の僕には眩しく映る
キミは知らないだろう?

僕がどんなに不安だったかを

キミは気づかないだろう?

僕がどんなに怖れていたかを

キミが傍に居ない

それだけで恐怖にココロが蝕まれていたことを

だから



ワカラセテアゲル



僕がどんなに・・・・



「帰ったらさ、つららに話したい事があるんだ」
「え?なんですか?」
「ふふ、家に帰ってからね」
「はぁ」
きょとんと見上げる君の顔に
僕は幸せそうに微笑むと
「それ、重いでしょ?持つよ」
「え、いいですそんなリクオ様にそんな事・・・あっ」
「遠慮はダメ!僕がそうしたいんだから」
彼女の持っていた買い物袋をさっと取り上げると
ようやく空いた彼女の手を取って
一緒に歩き出した

家に着いたら伝えよう

彼女の手を取り
極上の笑顔で
彼女の全てを絡め取るように
甘い甘い言の葉を



彼女に伝えよう



狂おしい程のこの気持ちを



キミニ ワカラセテアゲル



伝えたいソレの名は・・・・

好き
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