「いい加減、観念なさい!」

「いや〜、ははははは」

美しい鈴のような音色の金切り声に

その場の殺伐とした空気をぶち壊す暢気な笑い声



長い黒髪に白い着物を身に纏った少女と

長い黒髪に黒い着流しを身に纏った青年が対峙していた



黒髪の少女は眉間に皺を寄せると氷の息を青年に向かって吹きかける

それはあっという間に巨大な氷の岩になり青年目がけて落ちていった



ドズン



辺りに鈍い地響きが伝わる

岩の半分が地面にめり込み巨大な穴を作り出す

しかし、ふわりと浮いた氷の岩の下には何もいなかった

あるのはぽっかりと空いた巨大な穴だけ

それを見て少女は「チッ」と舌打ちした

「危ないなぁ〜」

すると頭上から声が聞こえてきた

その暢気な声に少女は空を振り仰ぐ

己の作った巨大な氷の岩の上――



そこにちょこんと腰を下ろした黒髪の青年

その姿に少女はまた舌打ちした

「いい加減私にやられてお終い!そうすればこの組は安泰なんだから」

少女はぎろりと青年を見上げながら物騒な言葉を吐く

そんな少女の言葉に青年は大袈裟に肩を竦めて見せた

「はははは、姉上のように僕はそんなに野心家ではないんですけどねぇ〜」

そう言ってひらりとその氷の岩から飛び降りた

その瞬間無数の氷の礫が青年を襲う

飛び降りた青年の体は空中で自由を失い、無数の礫に貫かれる

その様子をにやりと口元に笑みを作りながら少女は見上げる

しかし――



「な……」



次の瞬間、青年の姿は霞のように揺らめいたかと思ったら闇夜に霧散した

少女はぎりっと唇を噛み締めると、大広間へと視線を向ける

その大広間の奥

上座に一番近いその場所に

先程攻撃した筈の青年の姿を見つけた

またしても舌打ちする少女

その時



「ご飯ですよ〜」



本日の強襲の終了を告げる声が響き渡った


[戻る] [アンケトップ] [次へ]