□至福の一時
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そんな午前の授業が終わりを告げる鐘が
鳴る頃には、氷麗は恋人への愛妻弁当片手に
リクオの教室を訪れるのだった

そして、主に屋上で恋人二人はのんびりと
(限られた時間ではあるが…)
過ごすのである
その過ごし方は、リクオが弁当をつつくのを
横で凄く嬉しそうに眺めながらも、
自分の弁当をつつき、他愛の無い…
(例えば、周辺警護の状況やお弁当の感想、清十字団の活動やこれからの予定など…)
話を世間話宜しく喋ったり
たまに、リクオが疲れた時などは
昼寝をしたりする
(昼寝の時は膝枕だったり、添い寝だったり…)
仲睦まじくあるが、昼のリクオは学校で
決して凄く甘い雰囲気を作ったりはしない
稀に、口付けてきたりはするが、
きちんと節度を守っている

こうして、午後の授業の予鈴が鳴るまでを
二人して屋上でほのぼの過ごすのだ
極稀にだが…学校の手伝いをする事もあるが
それはまた別の話である

この日常は、週の大半がこんな感じである
リクオの学校がある間、
氷麗は毎日欠かさず同行するのだ
それは護衛も兼ねているのだが、
私情も八割から九割方…含まれてもいるのは
リクオには余り知られたくない秘密である

午後の授業が始まると
氷麗は想像(最早、妄想の域)を一人楽しむ
しかし、百面相やら文句やら…
色々と駄々漏れしている為か、
しばしば目撃されているらしい

午後の授業の終わりを告げる鐘が鳴ると
ほぼ同時にリクオの教室に向かう
その光景も最早、浮世絵中学校恒例名物と
化しているのだった

それからは日直の仕事やら…掃除やら
(但し、大半は身代わり)をしたり、
清十字団の活動をしたり、
と中学生らしい生活をする

その間も、一緒に居られなかった時を
埋めるように寄り添いながら行動する
そんな二人に、周りは冷やかしやら非難やら
色々な声が上がるのだが…
氷麗は「流石、リクオ様です!!」などと
意に介して居ない為か、的外れな発言をして
更に騒がれる羽目になるのだった
因みにこの冷やかしやら非難の大半は、
氷麗の言葉に関してである

そして、下校時は登校時と変わらず
仲睦まじく寄り添いながら帰宅するのだが、
たまに寄り道したりなど、
学校では真面目なリクオからしては
滅多に見られない光景である
しかも、登校時とは異なり
肩を寄せ合って歩いていたりする

まぁ…所謂、登下校デートであるが、
彼等のそれは些かやり過ぎな気もしてくる

こうして、彼等は帰宅するのだが…
此処も普通の恋人とは違い、一つ屋根の下、
一緒に住んでいるからこそ、二人の間に
“さよなら”や“また明日”などの言葉は
存在していないのであった

帰宅してから暫くは
リクオは宿題や予習復習をし、
氷麗はその側で応援したり、繕い物をしたり
して過ごすのだ
そして、時間に寄ってはのんびりお茶をする
事もあり、その光景は若夫婦というよりは
熟年夫婦の様である

たまに買い物を一緒にしたりもする
氷麗は申し訳無さそうであるが
リクオは嬉々として寄り添ったり
荷物を持ったりしているのだという
微笑ましい光景に度々尾行している毛倡妓や
無理矢理付き合わされる首無は
ついつい頬を緩めてしまうのである

氷麗が食事当番では無い日はこんな感じだが
彼女は率先して物事を行うタイプ故か
しばしば拗ねるリクオが
屋敷内で目撃されているとか…

氷麗が食事当番の日は
学校から先に帰ったりするので
リクオが帰宅時に落ち込んでいる姿を
目撃したという話もある

そんなリクオだが、
氷麗の料理が(凍っていても)絶品な為か、
夕餉の支度が整ったと氷麗が自室に向かえば
嬉々として夕餉にやってくるのだという
しかも、連れ添ってやってくるのだと…

そして、夕餉の時はいつも隣同士で
引き離されるとリクオは不機嫌になると
屋敷の妖怪達は口を揃えて語ってくれた
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