□至福の一時
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近頃のリクオは逢魔ヶ時を迎えると
夜の妖の姿になる
その姿は父 鯉伴や祖父 ぬらりひょん似で
着流し姿は大変“いなせ”で“粋”である

夕餉の時は夜の姿のせいか、
些か…否、かなり行動が大胆になるという
準備をしている氷麗をいきなり捕まえては
膝に座らせたり、食前酒の相手をさせたりと
やりたい放題であると屋敷の連中が口を揃えた

真っ赤になりながらも
口では文句を言いつつ、請われるままに
氷麗は側に居るのだとも言っていた

そんな夕餉の後は基本的に、
リクオは散歩か自室で酌をする事が多い
だが、いつも氷麗を付き合わせている様で
しばしば屋敷内を
「氷麗、知らねぇか?」と
訊ね歩いているのだとか…

一方、氷麗は夕餉の後片付けを手伝ったり、
明日の下拵えをしたり、
はたまた…リクオの酌の準備をしたり
とやはり甲斐甲斐しく働き回るのである

だが、結局はリクオに捕まっては、
夜の町に散歩に繰り出したり、
化猫屋に行ったり、酌をしたりとする羽目に
なるのだが、文句を言う割に彼女の表情は
どこか嬉しそうであると毛倡妓達仲間は言う

化猫屋に行く時の話ではあるが、
猫娘に酌をさせるのでは無く、
酒を頼んだ後は猫達を下がらせてしまい、
氷麗に酌をさせるのだという

以前、良太猫がポツリと側近達に
「アレじゃあ…本家に居たって
変わらないじゃないですかい…
猫娘達が残念がってますよ…」
と漏らしたのは、他言無用とされている
「確かに…商売にならないんじゃ…」
と側近達が思っている事は、
当の本人には知らされて居ない

屋敷で酒を呑む時は、
いつも氷麗に酌をさせており、
たまに呑まされるのだと
氷麗が苦笑しながら仲間に漏らした事が
あるのだとか…
でも、リクオの相手を辞める気はないらしい
のだから…贅沢な悩みである

また、リクオはたまに
「一緒に風呂入るか?」と
聞いてくるらしいのだが、
氷麗に頑なに…しかも丁重に
断られているのだという

しかも、その誘い方は何とも大胆で
皆が広間に居るときや台所などで
口説き文句宜しく言うのだと
氷麗以下、妖怪達が口を揃えて教えてくれた

後に氷麗に聞いた話によれば、
「まだ…熱いお湯に入るの苦手で…
修行しなくては…」と…
(ぶっちゃけ、別に一緒じゃなくても良くね!?と鳥居、巻は思ったのだった…)

そして、寝る時が大変なのだという
平日、土日問わず、就寝時は主に
三パターンなのだとか…
そのパターンは、“リクオの部屋で共に”か
“氷麗の部屋で共に”か“別々か”らしい
氷麗的には、三つ目が良いのだと言う
理由は、翌日に学校があるから…と
何とも側近らしい発言をしていた
しかし、実際はそうは行かないらしい…

更に、その三パターンの中も、
二つに別れるのだとか…
その二つとは、“添い寝”か…………………
所謂“情事”なのだとか…

氷麗は専ら前者が好きなのだが
リクオの勢いに気圧されて共に寝る時は
後者になるのだと涙ながらに
呟いていたと言う

逃げれば良いのでは?という言葉は
愚問らしく、文句を言う割に
頬を赤らめ嬉しそうに語るのだと
側近達は言っていた
しかも、彼等は最後にいつも
「“のろけ”ならもう沢山…」と言うのだ

だが、苦言を言うのに
氷麗がリクオを氷像にしない所を見ると
何だかんだ言ったって、嬉しいんじゃん
と毛倡妓は思うのだそうだ

また、幸せオーラ満開だから
別に其処まで言わなくても…
と首無は思うのだそうだ

そして、次の日は毛倡妓か首無が
起こすそうなのだが、
恋人二人…仲睦まじく寝ている姿を見て
心が温まるのだと二人は言う

お互いを護るように
抱き締め合って寝ている姿は
本当に幸せそうで素敵よね〜♪
羨ましいわ!!
とリクオの母親 若菜も証言してくれた

これが、平日の二人の過ごし方らしい…

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