そんなわけで、未来の妖怪の総大将とその側近(リクオによれば未来のその妻)と天才陰陽師少女の三人旅(オプション多数)が始まった

そしてどういうわけだか、その旅の中、ゆらとつららは仲良くなった

女だてらに戦いに身を置く者同士であることが二人をそうさせたのかも知れないし、お姉さん属性のつららと妹属性のゆらは不思議と波長が合ったのかもしれない

どこか危なっかしいゆらにつららは世話を焼きたがり、ボケかツッコミかと問われれば間違いなくボケ(それも天然)なつららにゆらがツッコむと言う良好な友人関係が二人の間には出来上がっていた

それが、冒頭のリクオの台詞へと?がることになった



「しかしなんや、二人仲ええなぁ

 今更やけど、あんたら夫婦か?」



そして二人の会話は盛り上がり、しまいにはゆらの口からそんな言葉が飛び出すことになった

けれども、そんなゆらの言葉に顔を赤くしふるふると首を横に振ると



「ちっ、違います!

 滅相もない」



そうつららは大声で言った

そんな彼女に、そんなに力いっぱい否定しなくても…と思いやられる今後の険しい道のりにリクオは遠い目をした だが…



「それに、私じゃリクオ様のお嫁さんにはなれませんから…」



そう切なげに呟かれたつららの言葉にリクオは瞠目した

ゆらもそんなつららにかける言葉が見つからず、しかし何か言おうと口を開きかけた

が、その時



「あっ!」



と、つららが声を上げた

そして



「また、人が倒れてます!」



そう言いながら、またもいち早くそちらに飛んでいってしまった

そんなつららをゆらが追いかけ、一人残されたリクオも今度はなんだと二人の後を追った



「キャー!イヤー!!」

「なんや、こいつ!!」



しかし、先にそちらにたどり着いた二人から上がった悲鳴に、リクオは今度こそ敵の罠かと、そのスピードを上げた

けれど、そこにたどり着いたリクオが見た者は…



美丈夫と評されるような顔立ち、筋骨隆々の体躯、膝下まで伸びた長い髪を持つ…全裸の男だった



彼女たちの悲鳴にその全裸の男はむくりと起き上がった

そして、二人の方に歩いてこようとしたものだから、リクオはそんな男と二人の間に刀を抜いて立ち塞がり、ゆらは廉貞を装備し、つららは通常サイズに戻ると有無を言わせず攻撃を仕掛けようとした



だが、その瞬間鳴り響いたその男の腹の音に、三人は脱力した



その後、もういい加減離れて進む意味もないので他の側近たちとも合流し、その辺りで調達した食材でつららと毛倡妓が手早く全員分の食事を用意した

その間、裸の男は食料と同時に調達してきた衣服を着させられ、大人しくしていた

が、食事が始まるとゆらと競うように食べ始めた

そのあまりの食べっぷりに皆唖然としてしまったが、彼はそんなことは一向に気にすることなく食事を続けた

まあ行倒れるくらいだから、しょうがないといえばしょうがなかったのかもしれないが…

食事が終わり、皆がほっと一息ついた頃、その男がやっと口を開いた



「すまぬな、旅の者

 おかげで助かった」

しかし、そうなんとも鷹揚な口調でしゃべる男にイラッときたゆらが



「なんや、その物言い!

 人に飯食わせてもらっといて

 というか、なんで裸で倒れとんねん!!

 変態か?変態なんか?いや、もうどう考えても変態やろ!?」



そうまくし立てた

その言葉に、いや、おまえも行倒れてたし、飯も食わせてもらったくせに…とは言えず、だがそんな彼女の言い分も分かりすぎるほど分かるのでリクオは黙っていた

すると



「私の名は晴明

 久しぶりに人間界に行こうとしたのだが、どういうわけかこの体は人間界に適応しなかったらしく、向こうにつくなり腕がもげてな

 しょうがなくこちらに帰ってきて、腕を再生したところまではよかったのだが、力尽き、ついでに何故か衣服も失い、倒れてしまったのだ」



そう、割と真面目に返事を返した

その言葉に



「ああ、おまえもしかしてあの『安倍清明』か?

 おまえとおまえの母親の『羽衣狐』と、後『ぬらりひょん』は人間界にとって至極迷惑な存在やから、花開院家が総力をもって、人間界への扉をくぐれない様にしとるから」



と、どこが得意げにゆらは合点が言ったとばかりに頷いた

(その場合、何故衣服まで消失することになったのかは説明されなかったが…)

しかし、そこで今度は奴良組サイドから声が上がった



「こいつが、あの安倍晴明!?」

「あの羽衣狐が溺愛してるってうわさの息子の!?」



そんなざわめき立つ側近たちをよそに、リクオは努めて冷静に訊ねた



「なあ、あんた

 いつから家を空けてるんだ?」

「うむ、まあここ2週間といったところか」



そして、それで全ての謎は解けた

じっちゃんの名にかけることもなく


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