「うーん、ようやく終わったぁ・・・」
勉強に疲れた体をぐぅ、と伸ばし、すぐに脱力して、五体をリラックスさせる。ようやく、夏休みの課題が全て終了し、達成感と安堵のため息をリクオはついた。時刻は既に、夜10時を回っている。
そのとき、ちょうど襖の外に慣れた気配を感じた。
「リクオ様、お勉強中に失礼します。お茶のお代わりをお持ちしました」
「ああ・・・丁度、終わったところだよ。入っておいで」
す、と音もなく障子が開いて、つららが室内に入ってくる。そして、にっこり笑った。
「もう夏休みの宿題、終わられたんですか?さすがリクオ様ですね」
「そうでもないよ。さすがに、大変だった」
苦笑気味にリクオがそう答えると、つららは安心した表情を浮かべ、リクオの側へ寄ってきた。
「それは、お疲れさまでした。はい、どうぞ」
「うん、ありがとう」
手渡された、よく冷えたお茶をリクオは飲み干す。疲れた頭に冷えたお茶が、気持ち良く沁み渡った。つららは、ふふ、と笑った。
「なに?」
「いえ・・・ようやく、いつものリクオ様に戻られたなぁ、と思いまして」
謎の笑いの意味を問えば、そんな答えが返ってきた。それを聞いて、ギクリ、と体を強張らせる。
「・・・やっぱ、気付いてた?」
「ええ、それは、まあ。いつもと様子が違いましたし・・・昨晩、私が何か粗相をしたのかと思って、少し不安でした」
そう言って、つららは微笑む。ふと、その艶やかな唇に、またもやリクオは目を奪われた。
―――昨晩、自分は、あれに・・・
不意に、ドクリと、心の臓が脈打つのをリクオは感じた。今朝からの不整脈とはまた違う・・・血の、熱いさざめき
同時に、どうしようもない想いが込み上げてくる
不意に黙り込んだリクオを、つららは怪訝そうに覗きこんだ。
しかし次の瞬間、あ、と思う間もなく、つららは腕を引かれ、その広い胸に飛び込んでいた。
(え・・・?広い・・・?)
は、として目を上げると、そこには夜姿に変化したリクオが、いた。
「じゃあ・・・知りたいか?」
「へ・・・ふえええぇ?!」
いきなりのことに、つららは素っ頓狂な悲鳴を上げていた。リクオの夜の秀麗な顔が間近にあり、それが色気を孕んだ流し目をしてくるのだ。たまらず、つららの頬が一気に紅潮する。
しかも、気が付けば自分の体はリクオの膝の上にあり、腰には逃げれないようにがっちりとリクオの腕が回っている。有体に言えば座ったまま抱きしめられているようで、大胆過ぎる夜のリクオの行為に、つららはくらくらと目眩がするのを感じた。
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