第二トラップ――三羽鴉
バサッ バサッ バサッ
ズドドドドドドド〜〜、と猛ダッシュで廊下を走るリクオの前に三羽烏が突然舞い降りてきた
「リクオ様、これ以上は行かせませぬ」
「黒羽丸か?お前らなんで?」
「父上の言いつけです」
キキキキー、と三羽烏の手前で止まらざる負えなくなったリクオは黒羽丸の言葉に舌打ちする
「邪魔だどけ!」
「できません!」
「ほお、親父が恐いか黒羽丸?いつまでもお子様だなぁ〜」
「任務ですから」
ズゴゴゴゴゴゴゴ
両者鼻先が触れ合いそうな程顔を近づけて睨み合う
凄まじい畏れがぶつかり合っていた
そんな二人を遠巻きに見ていたささ美とトサカ丸は
「なあ、俺達ってその・・・出歯亀なんじゃねえの?」
「この場合言い回しが違うと思うのだが、言いたい事はわかるぞ」
「だよな、お〜い兄貴」
「なんだ?」
ギン、とリクオに向けていた畏れのままトサカ丸を睨み上げる黒羽丸
その畏れに「ひっ」と声を上げながらトサカ丸は震えながら黒羽丸に言った
「兄貴、ここは辞めた方が良いのでは?」
「何故だ?」
「いや、その・・・」
トサカ丸は何か言い辛そうにぽりぽりと頬を掻くと、音も無く黒羽丸に近づき耳元でこそりと囁く
するとどういう訳か、黒羽丸はトサカ丸の言葉に納得したようで険しい顔が一変、無表情ないつもの顔に戻った
「しかし父上が・・・」
何を話したのか知らないが、これを好機と取ったリクオはすかさず黒羽丸に向かって口を開いた
「お前ら俺と親父どっちの言うことを聞くんだ?」
「「「うっ」」」
その言葉に三羽烏は押し黙る
「く・・・リクオ様、この黒羽丸、主に対してなんという無礼を・・・腹を切ってお詫び申し上げま「待て!まてまて〜〜!」」
我に返った黒羽丸が突然土下座をしたかと思ったら、短刀を取り出し物騒なことを言ってきたのでリクオは慌てて止めに入った
「リクオ様?」
「いやいやいや、腹切るほどでもねえだろう、ここをちょこっと、そう・・・通してくれるだけでいいんだ、それで許してやる」
「はっわかりました、行くぞお前達」
黒羽丸は踵を返すと他のきょうだい達を連れてバサバサと空高く舞い上がる
「それでは」と飛び去る寸前、黒羽丸は生真面目さ故にリクオに振り返り余計な一言を残していった
「あまり、その・・・雪女にご無理をされませんようお願いします」
ぺこりと頭を下げて、今度こそ夜の闇夜に消えていった
「大きなお世話だ」
リクオは眉間に皺を寄せて三羽烏の消えていった空を見上げた
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