「ところでつらら・・・」
「はい?」
「さっきから・・・落ちつかねぇようだが、どうかしたか?」
「え・・・?いえ、どうも・・」
「嘘つけ。何かあったのか?」
何も考えていないようで
何も気づいていないようで
この主は掴み所無く、全てを見抜いてくる。
努めて平静を装っていたつもりだったが、この人にはそれも通用しない。
そんなこと、何年も前から分かっていたこと―
「そう、見えます?」
「あ?それ、隠してたのか?」
「っ・・」
こっちは主に無駄な気苦労をかけぬようにと、何食わぬ顔を通していたというのに。
相変わらずこの方には敵わない―
つららはふうっと息を吐いて諦めると、抑えていた怒気を込めて言った。
「・・・牛頭丸のやつです」
「牛頭丸?あいつ、まだうちにいたんだっけか」
「はい!あいつ、何かと私につっかかってくるんです・・!」
つららは沸々と湧き上がる怒りに身を震わせながら言った。
「・・・一体何された?」
「今日なんか、いきなり掴みかかってきて・・・本気で永久凍結させようかと思いました」
「・・・」
リクオの中で何か、熱いものが湧き上がってくるのを感じた。
つららの怒りとはまた別の―
もっとどす黒く、渦巻くような怒りの炎が。
「あの・・・リクオ様?」
リクオの様子がおかしいことに気がついたつららが心配そうに話しかける。
「つらら・・・」
「はい?」
「二度と、あいつに近づくんじゃねぇぞ」
「・・・私から近づいてるわけじゃありません!いつだってあいつの方から・・」
「いいな!」
「ふぇ!?は・・・はい」
突然語気を強めたリクオに驚くつらら。
「きょ、今日のリクオ様はなんか・・・変ですよ?」
「わりぃ、疲れてるんだ・・・」
リクオはそう言って腰を上げると、すでに敷かれた布団へ潜り込んだ。
「もうっ・・・おやすみなさい、リクオ様」
つららは小さいため息の後、礼をして自室へ引き上げた。
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