天井高く掲げたリクオを見上げながら満足げに叫ぶ泥田坊

「は?」

「あ゛?」

その場に居た側近達はもちろん、リクオまでもが呆気に取られた

にこにこにこにこ

どういうわけか泥田坊は嬉しそうに笑っている

「おい」

巨大な手に捕まえられたままリクオは泥田坊を呼んだ

「あんだべ?」

「取ったって何をだ?」

「ああ?おめぇだよおめぇ」

そう言って泥田坊はリクオを指差した

「意味わかんねえぞ・・・」

リクオは半目になって泥田坊を睨みつける

「ああ、わかんねえやつだな〜奴良組若頭捕まえたんだから、奴良組は俺のもんだべ」

何言ってるんだべ〜、と泥田坊はさも当たり前だとばかりに言ってのけた

「・・・・誰に聞いたんだそれ」

泥田坊の腕の中、器用にも腕を組み懐から出した煙管をぷかりとふかしながらリクオは半目のまま聞いてきた

「ああ、あいつだあいつ!鉄鼠(てっそ)が教えてくれたんだべぇ〜」

嬉しそうに言う泥田坊に、リクオは盛大な溜息を吐くと



「取り敢えず、お仕置きだな・・・」



と懐から大きな盃を取り出した

「明鏡止水 桜」

ほとんどやる気の無いような声で言うと、ボッと泥田坊の周りに炎が宿る

「うわっちちち、火、火ィ〜〜!!」

泥田坊はたまらずリクオを手放しわたわたと暴れだした

ストッと軽い身のこなしで床に着地したリクオはジト目のまま泥田坊を見上げた

「さっき言ってた鉄鼠か?そいつの場所教えたらソレ消してやるぜ?」

リクオは怒気を含んだ意地の悪い笑みを浮かべて泥田坊に言った

一方泥田坊はというと――

「うわっ、あちいあちい!し、しし知らん!知らねんだよあいつの場所は〜ふらっと俺のとこへ来て”土地がほしくねえか?”って聞いてきたんだ、それで俺欲しいって言ったら”じゃあ手伝えって”だから俺何も知らねえ!!」

必死の形相で訴えてくる泥田坊

どうやら嘘はついていないようなのだが・・・・

「う〜ん、信用できねえな〜」

半目のまま、にやにやと笑みを張り付かせたまま泥田坊の言葉をばっさりと切り捨てるリクオ

一見、楽しそうに敵を虐めている様に見えるリクオだが



その笑顔ははっきり言って凄まじく怒っていますねリクオ様



と、長年の付き合いである側近達には、リクオの感情は手に取るようにわかった

「リクオ様怒ってるな」

「そりゃそうだろ」

「あんな理由で襲われた挙句、雪女を攫われちまったんだからな」

ひそひそひそひそ、リクオに聞こえないように囁き合う

こうなったリクオを止められる者は誰もいない

『ドSヌシ』と化したリクオの拷問を受ける泥田坊に、敵とはいえ哀れむような視線を向けながら側近達は心の中で合掌していた



帰ったら大仕事だな



この後待ち構えている『つらら捜索』に躍起になるリクオの姿を想像し、もちろん扱き使われるであろう自分達の不幸に深い深い溜息を吐く側近達であった


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