ふと、先程の男の事が脳裏に甦った
あれは確か5番街のあのビルで会った男だった
だとすると、今回の騒ぎの元凶はあいつ・・・早くここから逃げ出さなければならない
奴は奴良組に喧嘩を売ってきた相手だ、早くリクオの元に戻って奴がここに居る事を伝えなければ
側近としての勤めを思い出しつららは脱出を考える
取り敢えずこの縄を何とかしようと辺りを窺ってみたが、あるのは部屋の隅に氷漬けにされたネズミ達しかなかった
つららは仕方なく妖気を操って氷の刃を出現させると、手首を縛る縄をゴリゴリと切り始めた
暫く地道な作業を続けていると、プツンと手首の縄は切れた
自由になったつららは小屋の戸を少しだけ開いてそっと外の様子を窺う
パシン
次の瞬間すぐさま戸を閉め厳重に氷漬けにすると、はぁと盛大な溜息を吐いた
外にはあの男が配置したのであろう手下と思われるネズミ達がずらりと小屋の前に並んでいたのだった
これでは逃げるに逃げられない
どうやってここから逃げ出そうかとつららが思案していると、どこからか声が聞こえてきた
「もし、もし・・・」
「誰?」
つららは声のする方を振り返った
しかしそこには誰もおらず、つららは不思議に思いキョロキョロ辺りを見回していると
つつつ〜、と天井から蜘蛛が降りてきた
「もしや貴方は奴良組の雪女ではありませんか?」
「いかにも、私は奴良家の者ですが・・・そういう貴方は?」
目の前に降りて来た蜘蛛につららは口元を袖で隠しながら聞き返す
「私は女郎蜘蛛一族の者、リクオ様の命により貴方を探しておりました」
「リクオ様が?」
「はい、本家の方々も皆雪女様をお探しでございます」
「皆が・・・・」
女郎蜘蛛の言葉につららはぱあっと明るい顔になる
「今しばらくの辛抱を、私のこの糸で仲間に居場所を伝えましたので次期助けが来ることでしょう」
「わかりました、私の方も何とか脱出できないか試みてみます」
「ご無理をなさらぬよう、では・・・・」
そう言って女郎蜘蛛はするすると糸を辿り天井裏へと消えていった
女郎蜘蛛の消えていった天上を見上げていたつららは、「さて」と氷漬けにされた戸に視線を戻すと
「取り敢えず逃げる算段を考えるとして、あいつが入って来ないようにしておかなくちゃね」
そう呟くと、ひゅうっと部屋中に冷気を吹きかけ分厚い氷の壁を作るのであった
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