「さてと、どうするこやつ?」

「ん?ああ、やっちまっていいんじゃねえか?」

「ああ、この前貸元の所に盗みに入った盗賊だろう?」

「リクオ様が懲らしめたとか言う奴か?」

「う〜ん、恨んでそうだね〜」

「そうね、後々害になりそうね」

ふふふふ、と怪しい笑みを称えながら側近達は口々にそう言う

「ま、まてお前ら、そうだ奴良組、俺も奴良組に入るぜ、なあいいだろう?」

その姿にぞくりと肌を粟立たせながら頼豪は見苦しくも命乞いをしてきた

そんな頼豪に側近達は心底嫌そうな顔を向ける

「御免だな、こんなやつが入った日にはリクオ様の命が危ない」

「そうね、いつ裏切るかわかったもんじゃないわ」

「だな」

「ああ」

「そうだね〜」

側近達の見下ろす中、頼豪は恐怖に震え上がった



お前が雪女を攫ったせいで俺たちがどんなに大変な目に遭ったか思い知らせてやる



にこにこと身も凍りそうな笑顔を張り付かせた側近達の顔には、はっきりとそう書いてあった

そして次の瞬間――

「暗器黒演舞」

「殺取」

「みだれ髪」

「剛力礼讃」

「河童忍法」

奴良組側近勢の本気の畏れ全発動!



ちゅどーーん



派手な音を響かせて天高く巨大な鼠が吹き飛んでいった

その後、頼豪の姿を見たものはいなかったそうな





月明かりの薄暗い山道を暫く進むと小さな山小屋が見えてきた



ああ、ここにいるな



リクオはその山小屋を見て心の中で思った

その小屋は、見るからに冷たそうな分厚い氷に覆われていた

「・・・・・・・」

扉の部分に手を触れると、芯まで凍りそうなほど冷たい冷気が手の平を伝ってくる

慌てて手を離したリクオは、さてどうやって中に入ろうかと首を捻った



チャキリ



弥々切丸を構えるとその扉を一刀両断する

パキィィィンと真っ二つになった扉は足元に転がり、リクオは弥々切丸を懐にしまうと小屋の中へと入っていった

「つらら」

真っ暗な闇の中、側近の名を呼ぶとその部屋の奥で影が動いた

「リクオ様!」

パタパタと駆けて来る足音が聞こえる

戸であった場所から差し込む月明かりに照らされて、一日ぶりのつららの笑顔がそこに現れた

リクオは安堵の息を吐くと、つららの元へと近づき抱き締めようと伸ばしかけた腕が途中で止まった

「つらら、それは?」

「はい?」

パタパタと満面の笑顔で近づいてくるつららは不思議そうに首を傾げると、リクオの前で立ち止まる

「首が・・・何ですか?」

リクオに指差された場所を無意識のうちに手で触りながらリクオに聞いてくる

コレにつららは気づいていないらしい

つららの左首筋の辺り

わざと見える位置にくっきりと色ついた赤い斑点

それはまさしく――



・・・・ンの野郎!



そこで初めてあの男がつららを攫った理由を理解した


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