「?」
二人のやり取りにつららは首を傾げた
側に来ていたリクオも何事かと二人を伺っている
「何を申します、姫君は私がお守りします。未来永劫守ると誓ったではありませんか!?」
その言葉につららは息を飲んだ
尚も二人は言い合い続ける
「ふん、どうするというのじゃ?相手は物の怪ぞ?お前に妾を守れるというのか?」
「そ、それはもちろん命を掛けてお守りする所存でございます」
「馬鹿なことを・・・・」
陸之助の言葉に六花は堪えきれないと言わんばかりに唇を噛んで俯いてしまった
「姫様・・・」
「もうよい!朝餉にするぞ!!」
陸之助が何かを言おうと口を開きかけると、六花は遮る様にそう言うとさっさとその場を去って行ってしまった
一人屋敷へと戻る六花の後姿を陸之助は寂しそうに見つめていた
「なあ」
そんな場の沈黙を破ったのは、一部始終を見ていたリクオだった
「さっき物の怪って言ってたけど、姫さん狙われてるのか?」
陸之助はリクオの指摘に思わず振り返った
そして、鋭い眼光でリクオを睨みつける
「そうだ、六花様は悪しき物の怪に狙われているのだ」
そう言いながら陸之助は苦しそうに唇を噛んで俯いてしまった
そんな陸之助の様子を静かに見ていたリクオは、静かな声で陸之助に言った
「なあ、その話詳しく聞かせてくれねえか?」
「で、その鬼が次の新月の時に姫さんを嫁に寄越せと言って来たんだな?」
「ああ、そうだ」
朝餉も終わり、リクオとつららは人通りの少ない部屋で先ほどの話を陸之助に説明してもらっていた
陸之助の話はこうだった――
ある日、空が真っ黒い雲で覆われたかと思うと突然屋敷に巨大な鬼が現れたという
その鬼は、次々と家臣たちを喰い殺すと、この屋敷の主君に姫を嫁に寄越せと言ってきたそうだ
しかも鬼は姫を寄越さねば、この家のものはおろか、城下に住む人々も食い殺すと脅してきた
殿様は悩みに悩んだ末、とうとう姫を差し出すことを決心した
そして、姫が鬼の元へ嫁ぐ日は3日後の新月の日だというのだ
「姫様が、姫様が不憫で不憫で・・・まだ15歳の若さで鬼の所に行くなど・・・」
陸之助は口元に手を当てると悔しそうに嘆いた
そこまで聞いていたリクオは、ゆっくりと目を開けると陸之助に向かって口を開いた
が、そのリクオの言葉は口から出ることは無かった
何故なら、珍しくつららが身を乗り出して陸之助の手をがしっと握り締めたからだ
呆気にとられるリクオを他所に、真剣な面持ちでつららは陸之助を見つめると、とんでもない事を口走った
「姫様は私達が守ります!陸之助様、諦めてはなりませんよ!」
その、いつにないつららの迫力に、リクオはもちろん手を握り締められている陸之助も目をまん丸に見開いてぽかんとつららを見ていた
「お、おい・・・」
リクオははっと我に返ると、側近の暴走を止めようとつららの肩に手を置いた
しかし、何故か肩に置いたリクオの手をつららはがしりと掴むと
「みんなでお姫様を守りましょう!!」
お〜〜!と勇ましく掛け声を上げながら、リクオと陸之助の手を両手で掲げ鼻息も荒く叫んだのだった
「お、おお〜」
何故だかリクオはつららの剣幕に気圧されてしまい、何も言えずされるがままの状態で小さく掛け声を上げていた
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