「マイファミリ〜聞いたかい?通り魔事件だそうだよ!」

放課後いつものように部室に入った途端、嬉しそうに両腕を広げながら熱弁する清次の姿が目に飛び込んできた

案の定、清次は今噂の通り魔事件を『妖怪の仕業に違いない!』と勝手に解釈していた

「というわけで、今夜その通り魔を探そうと思っている」

もちろん皆も協力してくれるだろう?と、どこからその自信が来るのか、清次は断られる事を全く考えていないような態度でそう言ってきた

だいたい予想していた部員達は皆、思い思いの反応を見せた



「はあ〜?あんた何考えてんの?通り魔でしょ?危ないじゃん!!」

私達はパ〜ス!と手をひらひらさせて断るのは巻と鳥居だ



「俺も今回は辞めたほうがいいと思うっす」

と、申し訳なさそうに肩を窄めて清次に手を合わせるのは、最近清次の舎弟(?)が板についてきた島だった



「私も今回はちょっと・・・・」

顔を青褪めて首を左右に振りながら辞退してきたのは、リクオの幼馴染で最近勘が鋭くなりつつあるカナだ



「なんだいなんだい、皆ファミリーだろう?清十字探偵団の名が廃るじゃないか!」

そんな部員達に清次はご立腹だ

眉を吊り上げて、清十字団がいかに勇敢で調査に真剣であるべきかを熱弁し始めた

「て、言われても〜、怖いし〜危険だし〜なによりあたしら狙われたらどうしてくれるのよ!」

そんな清次に抗議の声を上げたのはもちろん気の強い巻で

その援護に鳥居も参戦していた

「そうよ〜襲われたらどうするつもりなのよ!?」

「ふっ、安心したまえ諸君!」

巻と鳥居の抗議に清次は自信満々に胸を張る

「この僕が作ったスペシャル防犯グッズがあれば大丈夫さ!」

どうやって忍ばせていたのか、懐からお札のついた巾着袋を取り出すと高々と上に掲げて見せてきた

その自信満々な動きは、ババ〜ン!と効果音がついてきそうな程だ

「何それ?」

冷ややかな巻の視線が不審げにその巾着袋を見上げる

「ふっふっふっ、これさえあれば通り魔など恐くはないさ」

清次はそう言うと巻にその巾着袋・・・もといスペシャル防犯グッズを手渡した

「どれどれ・・・」

巻は先程の態度とは裏腹に、興味津々といった感じで手にした袋の結び目を解く

袋には清次自身が書いたのであろう手書きの魔よけのお札が縫い付けてあった

そしてその中には――



催涙スプレー

防犯ブザー

スタンガン



「・・・・・・・」

袋を開けた途端、中を興味深く覗き込んでいた皆の動きが止まった

「ふっ、どうだいこれさえあれば安心・・・・」

「なわけ無いだろーーーーーーー!!」



ばちこーーーーーーーん



腕を組み自信満々な清次の後頭部に巻の鉄拳が炸裂した

ぷしゅ〜、と後頭部から煙を上げ床に倒れた清次を横目に、部員達は「これ以上関わっていられない」とぞろぞろと退散して行ってしまった



「リクオ様はどうします?」

その一部始終を遠巻きに見守っていたつららは、皆が部屋を出て行ったのを確認した後、側に居たリクオに話しかけてきた

「う〜ん、通り魔か・・・・妖怪だったら注意しとかないといけないよね?」

「はい、シマを荒らす新参者の可能性もあります」

「そうか・・・・」

リクオはそこで口を噤む

なにやら考え込んでしまったリクオに、つららは嫌な予感を覚えながら小さく溜息を落としていた


[戻る] [キリ番トップ] [次へ]