ドドドドドドドドドドドドド
「こんな日に空気が読めない奴らだぜ」
「KYって言うんでしょそれ?」
響いてくる地鳴りに組頭兼特攻隊長の青田坊が溜息を零す
そんな剛力妖怪の隣で相変わらずな河童が暢気な言葉を付け足していた
屋敷の門の前、二人は紋付袴姿でこれからやってくるであろう参列客を待っていた
しかしやってきたのは招かれざる客であった
やれやれと二人が嘆息していると、あっという間に地響きの元凶が直ぐ近くまでやってきた
「奴良組総大将の首を頂きに来たぜ」
空気の読めない妖怪の総大将らしき男は、声高々に青田坊たちに向かって不適に笑いながらそう告げてきた
とりあえず、律儀に宣戦布告をする敵大将の言葉を聞いてやっていた二人は――
はあぁぁぁぁぁぁぁぁ
盛大な溜息を吐きながら肩を落とすのであった
「え?なんだって?」
リクオは最初冗談かと思った
「ですから敵襲です」
もう一度同じ言葉を吐いてくれた鴉天狗の体をぐわしっと捕まえる
「冗談だよね?」
片手で捕まえた鴉天狗を顔の前まで持ってきたリクオはそう言いながら爽やかな笑顔を作って見せた
しかしその米神の辺りはぴくぴくと痙攣している
「こんな時にそんな冗談なんて言いませんよ〜」
ぐるじい!と手足をばたつかせ必死に言ってくる鴉天狗の言葉に、リクオは「なんで?」と呟きながら呆然とその場に立ち尽くすのであった
「はぁ・・・」
「はあぁ・・・」
「はあぁぁぁぁぁぁ」
「リクオ様、リクオ様」
「んだよ」
長い長い溜息を吐いていたリクオは、隣から呼ぶ声にぎろりと視線を向ける
その視線に「ひぇっ」と小さく悲鳴を上げながら背後に控えていた下僕達が冷や汗を流しながら後退った
「い、いえ・・・お気持ちは分かりますが、もうちょっとこう身を引き締めてくださいませ」
ひくひくと頬を引き攣らせながら、恐る恐る耳打ちしてきたのは今日の司会進行役の首無である
そんな首無の言葉にリクオは片眉をぴくりと跳ね上げた
「はんっ、わかってるよそんな事、でもなぁ何で今日なんだよ!?」
「そう言われましてもこればっかりは・・・・」
嘆く百鬼の主に側近である首無はただ只「仕方ありませんよ」と宥める他無い
そんな側近をぎろりと八つ当たりを込めて睨みつけると
「くそっ!さっさと終わらせて式始めるぞ!!」
やけくそ
と言わんばかりにリクオは叫んだ
その声を合図に、背後に控えていた百鬼達が一斉に雄叫びを上げ我先にと突進していく
何処からともなく始まる争い
獣のような咆哮が辺りに響き
刃と刃がぶつかり合う
誰かが吹き飛ばされ、誰かを吹き飛ばし
道は割れ木々を薙ぎ払い焼き払われる
既に戦場と化したその場所に響くは
阿鼻叫喚
その景色はまさに
地獄絵図
リクオはそんな光景を半目で見据えながら胸中で呟いていた
くそっ、こんな日になんで出入りになるんだ〜〜〜!!
間違ってる、間違ってるぞこんなのお〜〜!!!
と・・・・
桜が舞い散る月夜の晩
粛々と行われる筈だった奴良組三代目の婚礼の儀
それをぶっつぶしてくれたKY妖怪達に向かってリクオは怒りも露わに鬼神の如き形相で瞳に涙を浮かべながら突進して行った
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