そして、僕が生まれてから100年経った

僕の子供の頃を知っている人達はもういない

幼馴染も一緒に学校に通っていた同級生達も

みんなみんな・・・・死んでしまった



彼らのその後の人生はどうだったのか僕は知らない

何故なら僕が生まれてから30年を越えた辺りから、彼らとの連絡はぱったりと途絶えてしまったから

僕は体の成長が止まった頃から昔から僕のことを知っている人間の知り合いとはできるだけ会わないようにしていた

だって、何十年経っても変わらない外見を見たらみんなきっと不審がるから

だから彼らがどうやって生き、どうやって死んで行ったのか僕には知る由も無かったのだが

でも、僕は知っていた

直接彼らから聞く事は叶わなかったが、僕は何故か下僕達に頼んで彼らのその後の余生を調べさせた



清継君

彼は家を継いで社長になった

沢山の企業に手を広げていた彼は、昔からの趣味が高じて『妖怪探索ツアー』やら『妖怪旅館』などを発案し旅行会社を経営、しかもそれが大当たりした

益々会社は繁栄し、後に妖怪長者と呼ばれるようになった

その後は伴侶を得、社長として二児の父親として最後の時は家族全員に見守られながら息を引き取ったという



島君

彼は兼ねてからの夢を叶え、日本いや世界代表のサッカー選手になった

テレビや新聞、雑誌などで彼の顔は毎日見ていたのでその事は知っていた

そして、引退後もサッカーの世界で実況に監督にと活躍し可愛い奥さんを貰いその後は円満な家庭を築きそして彼もまた幸せな一生を終えた



鳥居さんと巻さん

彼女らは普通のOLになり普通の恋愛をし普通の幸せな結婚をして子供も授かった

そして沢山の家族や孫達に囲まれて黄泉へと旅立っていったらしい



花開院さん

彼女は予想通り花開院家の跡を継ぎ二十八代目当主となった

以前あった花開院家の『妖怪は絶対”悪”』という教えは無くなり、代わりに『妖怪を見たら”まずは話してみい”それでダメだったら滅して良し』という教えが新しく追加されていた

自由気ままな彼女の言葉がそのままの教えになっていた事に苦笑を禁じえなかったが

しかしその教えに異を唱えるものはいなかったそうだ

以後その教えは未来永劫受け継がれることとなった

そして彼女もまた人間の定めに従い歳を取り跡取りを授かった後は引退し、静かな余生を送ったという

そしていよいよ最後を迎えるといった時、何処から現れたのか彼女の枕元にとある百鬼の主が現れ彼女の最後を看取った逸話は花開院家の伝承の一つとされ今も語られている



カナちゃん

彼女は僕と別れた後、モデルとして活躍していた

元々素質もあり努力家だった彼女は、あっという間にトップモデルの仲間入りを果たした

そして押しも押されぬカリスマモデルとして一躍有名になった

テレビに雑誌に引っ張りだこの彼女は世界中を飛び回り

そしてたまたま仕事で行った海外で運命的な出会いを果たし結婚をした

仕事も結婚も手に入れた彼女はその後、生涯をモデルに捧げながら順風満帆、幸せな家庭を築いて行った

そして愛する夫と子供たちに見守られ彼女もまた天に召された



そして僕を子供の頃から知る人間は一人もいなくなった


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