おまけ

ずずずず、と渋茶をすする音がその部屋に静かに響く
「して、あやつらはどうなった?」
冷め始めた愛用の湯飲みを持ちながら、しわがれた声の持ち主が目の前の茶飲み相手に問うた
「はい、策は上々狙い通りですぞ」
「本当か!?」
「はい、二人がくっつくのも時間の問題かと」
「そうかい、なら安心だ」
「本当に二人とも・・・」
「ああ、焦れったかったなぁ〜」
「ええまったく」
二人はそう呟くとやれやれと安堵の溜息を吐いた
「して式はいつ頃が良いと思う?」
「少々気が早いのでは?」
「なあ〜にこれだけ周りを待たせたんだ明日挙げたって誰も文句なんか言わねえよ」
「ですが総大将、こういうものには順序というものが・・・」
「ふん、妖怪に順序もへったくれもあるかい」
「まあ、今さら焦っても仕方ありますまい、ここは長い目で見たほうが良いでしょう」
「なんだおめえ、達磨お前もいたのか?」
「ええ、先程から・・・私も呼ばれても良いですかな?」
「ああ、でも意外だねぇお前が・・・」
「そうですかな?組の将来の事ですから」
「くくくく、わしらはちと甘いかのう?」
「えぇ、甘々ですな」
「ふふふ」
「くくく」
古参の三妖怪達は嬉しそうに忍び笑いを漏らす
「早く曾孫の顔が見たいもんじゃがのう・・・・」
「それは気が早すぎです」
「うむ」
暖かな日差しが降り注ぐ奥座敷
事の首謀者達がこっそりと茶会を開いていたのはここだけの話
おまけ了



おまけのおまけ

「やあ〜っと気づいたか」
月夜に映える枝垂桜の枝の上
優雅に煙管を咥えた一匹の妖怪が
嬉しそうにぽつりと呟いていた

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